林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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書彩創刊号

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『ふるほんやのざつし 書彩』創刊号(百艸書屋内書彩発行所、一九四九年七月一〇日)。『書彩』については何度か言及したことがある。神戸の古書店が集って作っていた古書目録であり書物雑誌である。百艸書屋の岸百艸こと玉田一郎が中心になって発行していた。第九号まで確認できている。

ふるほんや渡世も、所謂、猫の手でも借りたいといふ機なら、おそらく、こんな、くだらない刊行物は、出なかつたことだらう。何うにも閑で、退屈で、といつて、酒に走るほどの御威勢もなく、さりとて、清元を地でゆく柄行などさらさらなしときては、所詮、甲羅に合せた穴を掘るより、他に藝のないのが蟹どもの常である。
 何か・・・・と誰か一人が、口火を切つたのが始まりで、てんやわんやの小田原評定の結果が、依如件かたちとなつたのである。
 将して、克く、書を彩り得るや、否やは、かかつて同人一同の、今後の情熱に俟つばかりである。》(岸百艸「創刊片言」)

「誰か一人」とはむろん岸のことであろう。目次を掲げておく。

"西洋書誌学"の思ひ出………蘆呉須生
覚え書………中村蕪生
古本屋風土記(其一)………廣重堂
旧元町一丁目の角のおもひで[口絵]………小松益喜
百艸旧記(俳句)
古物明細帖 明治の巻………後藤和平
浮世絵くさぐさ………岸百艸
毛九六九
探求書
編輯後記………百艸記


"西洋書誌学"の思ひ出」はロゴス書店の前田梅太郎執筆。ぐろりあ・そさえての伊藤長蔵の旧蔵書について書かれている。非常に興味深いので一部を引用しておく。

数ケ月前、東京在住のロサンジエルス古本屋の主人、タツトル氏が下神来店の節、東洋学関係の書誌関係書を十数冊買つて行かれたが、其の書物が殆んどグロリア文庫伊藤長蔵氏の旧蔵せられたものであつたので、今更ながら、伊藤氏蒐集の書誌学書の立派だつたことが思ひ起こされた。伊藤氏は自身、欧洲各地を遊歴された際、その努力と経費とを省ずして、数百種の稀覯書を購入の上、それ等を舶載された程の愛書家であつた。

伊藤長蔵が神戸を去った後、その蒐集書が入札に付された。昭和十年七月酷暑の時期。来場の同業者も少なく、特殊な書物ばかりだったので、目録に掲載された二百程の欧文稀覯書も嘘のような安値で落札された。落札総額は《今の平凡社百科一組の値段と略ゝ同額位》だと記憶している。筆者はそれらの一部を列挙する。言及されているすべてのタイトルを掲げておく。

デイブダン「愛書狂」一八四二年初版本
「書誌学的デカメロン」三冊本
「北英吉利スコツトランド古書探訪記」
「フランス、ドイツ古書探訪記」
英吉利古刊本沿革史」四冊揃
エスリング「十五六世紀のベニス版とその書誌」七冊本
ホジキン「ラリオラ」私家版三冊本
ポルトガル王マニユエル「王室所蔵初頭ポルトガル関係書誌」
モリソン「大英博物館所蔵のインキユナブラーの研究」
ロバート・ペデイ「インキユナブラー書誌」
紐育書誌学会「欧洲文学珍本古梓籍貼込帖」
バルセロナ版「ビブリオグラフイア・カタラーナ」七冊揃
シラム「独逸古刻書誌」十三冊本
ワツト「英吉利書誌

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「旧元町一丁目の角のおもひで」小松益喜


「古本屋風土記」も面白い。

終戦の半年程前のことだが、思想犯として留置せられてゐる友人に本の差し入れをしてゐたことで一週間ブタ箱へほうり込まれて、県の特高係りにいぢめられた時に「バイブルて何んだ!」といふから「バイルブルて聖書だ!」「聖書て何んだ!」「ヤソの教へだ!」「ヤソの教へて何んだ!」とくる始末だ。其時に私蔵のマルクス主義文献数百種を押収された中に西鶴全集が入つてゐた。「ニシヅルニシヅル」としきりに云ふからこちらも「ニシヅルぢやないヒガシヅルだらう」と云つてやつたら真面目な顔で「いやニシヅルに違ひない、本屋のくせに常識のない奴だ」とくるから嬉しくなつてきた。コンナ人に営業もーー思想も取締られていたのだから、古本屋稼業も並たいていのことぢやない。

五、一五事件で家宅捜索をやられた時には吉野作造の「文化生活」まで引きあげられて取調べの種にせられたものだ。まだマルクスとマルサスを取違へる位は優秀な方だ。

署長室の本棚一杯に江戸文芸の図書が這入つてゐた。検束者を貰ひに行つて、一九三馬の話ばかりして美事に目的を達したことがあるが、こんなのは警察官としては全く型はづれの部類に属する。

あるいは神戸の名物古書店主・福岡梅次のくだりも凄い。大正末期頃の話のようである。

氏は神戸といふ風土の特色を最もよく発揮した古本屋で又東京、大阪等の同業者から「神戸の荒神様」で愛称された程無邪気な無鉄砲さをもつて居た。どんな種類の本でも驚かない。外国語は「デンデン知らん」と本人は云つて居るがサンスクリツトだらうがスカンジナビヤだらうがおかまひなしにーー内容のわからない位は問題にしないでーー買ひ込んでくる。そのかわり店勢は応接に暇のない程盛衰常なく店外迄溢れ出た程の本が数日の中にガラン洞の書棚ばかり残して消え去ることもさしてめづらしくない。ソレ一たびツムジが曲れば最后の一冊迄も呑んでしまはなければ気のすまない愉快な気性の人であつた。

いやあ、そんな古本屋があったのだ……一度見てみたかった。なお、明記されていないが、表紙に「知黙菴」と出ているのが表紙画の作者かなと思う(岸百艸その人か?)

『書彩』3(葵書房、一九五〇年三月二〇日)

『書彩』第九号(百艸書屋、一九六〇年五月)

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裏表紙



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by sumus2013 | 2017-09-08 21:21 | 関西の出版社 | Comments(0)
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