林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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昭和十二年の大阪市政

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『昭和十二年の大阪市政』(大阪市役所、一九三七年五月五日)。残念ながら架蔵書ではないが、なかなかに興味深い内容である。総説の「1 大阪市政の特色」から一部を引用してみる。太字はママ。

《近年各地の市政界にとかくはしたなき[五字傍点]紛争が絶えず、中には忌はしき不祥事さへ取沙汰されつつあるに反して、大阪市のみはかゝる悪声を耳にしないのみか、着々健全なる発達を続けてゐる。》

《池上市長が在職十年、関市長が助役を通じて在職二十一年、市政の上に大なる功績を残したのは、わが国自治政治発展史上、特筆に価するものであるが、こゝにも穏健和平の大阪市政の面目が窺はれるのである。》

《明治三十年の大阪港築造、三十六年の電車市営主義の確立、大正十年以来の尨大なる都市計画事業の達成、十二年の電燈買収、十四年の市域大拡張、昭和二年の学区廃止、四年の地下鉄の経営、九年の風水害の自力復興などの大事業が着々と功を奏し、今日の大をなすに至つたのは、大阪市民の企業的精神と奉仕的努力の賜でなくして何であろう。》

「2 本邦経済の中心として」からも少し引いておく。

《即ち昭和十年に於ける本市の港湾貿易は、輸出入年額十一億六千六百万円、噸量六百五十二万噸に上り、噸量に於て三百七万噸の入超となつてゐるが、価額に於ては実に七千三百四十万円の出超を示してゐる。これは大阪港の躍進振とともに全国にその類例を見ないところである。輸出において注目すべきは綿織物で二億五千八百万円の巨額に上り、輸出総額の四二%を占め、これに綿糸、毛織物、人絹、人絹織物を加算すれば、優に三億四千八百万円となり、大阪港輸出総額の五六%を占め、大阪港の輸出は全く繊維工業製品が中心であることが判る。その他、巨額を占めるものは、鉄製品、機械、自転車などの工業製品及び紙類、ガラス製品、缶詰などの各種雑貨であつて、いづれも本市工業力の生み出したものである。》

大阪市の人口は三百万、大阪府の七割を占める。昭和十二年度の純歳出は二億一千四百万円、府の財政の六倍に当るという。

《しかるに現在の制度は市が府の中にあるため、勢ひ府市の間に仕事の競争が起り、産業、保健、教育、社会事業などに不統制な二重行政が行はれ、甚だ不経済である。そのために市民は市税、府税を二重に負担させられ、しかもこの市民の納める府税のうちから郡部の施設に流れるものが、昭和十年度に於て、三百七十万円、すなわち一戸当りにして五円余りが市民の懐から郡部に流れ出る勘定であり、その結果府の財政は余裕ができても、市の財政はます〜〜困る一方である。》

どうしても特別市制を布き、市内のことは大阪市だけで切り盛りしなければならない。》

戦前から二重行政の問題はくすぶっていたわけだ。

以下、小生が気になる図版だけピックアップしてみる。かなり尖端的なモダン都市だったことが分るように思う。

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淀屋橋から御堂筋付近


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新築中の屠場と取引中の家畜市場


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都島の水上生活者


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水上生活の学童


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塵芥焼却場


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車両工場と流線型電車(市電)


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明朗な地下鉄


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電気科学館


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プラネタリウム


《本市は早くから家庭電化を目指して電気知識の普及に努めて来たが、一層これを拡大強化するため約二百万円を投じ、規模の大なる点に於て本邦に未だその例を見ない電気科学館を、四ツ橋に建設し、三月には市民待望裡に開館せられた。》

《一階は電気機械器具を陳列販売し、二階は弱電、無電の応用方面を、三階は電力、電熱の応用方面を、四階は照明に関する方面を展示し、五階は電気に関する原理方面を瞭然たらしめ、六、七、八階はこれをブッ通して、東洋唯一のプラネタリウム(天象儀)を据付け、その電気科学の粋を蒐めた装置を以て、天体運行の状況を如実に観察せしめる。また九階以上は防空塔として、非常時に際しては空襲監視をなし、全市十二ヶ所の防空サイレンは、こゝのボタン一つで統轄する。なほこの防空使命のほか、測候所とタイアップして天災非常時の予報をも行ふ計画である。》

赤字は筆者による。こういう機能も持たされていた。現在の大阪市立科学館のサイトではさすがに触れられていない(目下の状勢では再びそういう機能が必要かも!)。

大阪市立科学館
http://www.sci-museum.jp/about/history/denki_kagakukan/

手塚治虫や織田作之助がこの館のファンだったことはよく知られている。

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by sumus2013 | 2017-04-14 20:37 | 関西の出版社 | Comments(0)
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