林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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ブリダンの驢馬

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花田清輝『復興期の精神』(我観社、一九四六年一〇月五日)。前から手に入れたいと思っていた一冊。本日、ひょこり現れた。この本については以前少しだけ触れた。

小沢信男『捨身なひと』〜花田清輝『復興期の精神』

ここで「ブリダンの驢馬」から「ポアール」について引用したのだが、今回は表題の「ブリダンの驢馬」(普通は「ビュリダンの驢馬 paradoxe de l'âne de Buridan」)という逆説について紹介してみたい。その昔『復興期の精神』を読んでいちばん印象に残ったのはこのくだりだからである。花田はこう書いている。

《砂漠の中のオアシスのように、乾燥したスピノザの著作のそこここにばら撒かれている比喩のなかで、これは「石」のばあいとちがい、まったく人口に膾炙していない「ブリダンの驢馬」というのがある。ーーブリダンはいった、驢馬には自発的な選択能力がないから、水槽と秣桶との間におかれると、どちらを先に手をつけていいものかと迷ってしまい、やがて立ち往生して、餓死するにいたる、と。》(講談社文庫版より)

「石」のばあい……は石に意識があったとすればどうなるか? というこれまたやくたいもない論争を指す。秣(まぐさ)とあるところフランス語のウィキによればひと盛りの「からす麦」(一八五一年刊のフランス俚諺集による)。どちらにしても食物と水とどちらから始めようか決めかねてどちらも摂れずに死んでしまう驢馬の比喩である。優柔不断の極みとも言えるし、あるいは「中庸」の弱点を衝いた説だとも言える。

ジャン・ビュリダン(Jean Buridan、1295年頃 - 1358年)という過激な唯名論を唱えた聖職者が言い出したのでビュリダンの驢馬のパラドクスと呼ばれるが、これはあくまで伝説で、残された著作のなかには見えない。ビュリダンはオッカムのウィリアムの生徒であった。しかし後に師とも対立するようになる。唯名論というのは、例えば驢馬というとき一般的な「驢馬」という存在を認めず、個別の驢馬の集りとみる考え方。

ビュリダンには淫蕩なフランス王妃に招かれネスルの塔から袋詰めにされてセーヌ川に投げ込まれたという伝説もある。ネスルの塔(la tour de Nesle)は高さ二十五メートルもあったそうで王妃(誰なのかは不明、フィリップ・ル・ベル王の妻かという)はいつもここで逢引きをして相手の男をその度ごとにセーヌ川に流していたという。この話は有名だったらしくジャック・ヴィヨンも「そのかみの貴女を歌へるバラード Ballade des Dames du Temps Jadis」で引用している。

  同じくいづくぞビュリダンを
  袋にこめてセーヌ河に
  投ぜよとこそ宣りし女后も。
  さあれ古歳の雪やいづくぞ


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この本にはこんな真善美社の出版案内の栞が挟んであった(二つ折両面印刷、タテ24.5cm)。実は『復興期の精神』第二版は真善美社の処女出版として一九四七年二月に刊行される。これも貴重だ。田村書店のレッテルが栞に貼ってあるのも珍しい例ではないか。他にもう一枚、入場券も挿まれていた。

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「新日本文学会議講演会 伝統と現代芸術」、講師は岡本太郎、花田清輝、杉浦明平。豊島公会堂で11月17日(水)に開催されている。何年の十一月か? 豊島公会堂は一九五二年に開館、また花田が『新日本文学』の編集長だったのは一九五二年から五四年の間である。そして何より十一月十七日が水曜日なのは一九五四年だ、ということで昭和二十九年の講演会だと推定しておく。三越池袋店は二〇〇九年五月閉店、現在はヤマダ電機本店になっている。


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by sumus2013 | 2017-04-12 21:51 | 古書日録 | Comments(0)
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