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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


百人一詩次韻集

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いつもいろいろ御教示いただく中嶋康博氏がじつに渋い日記を入手し解読しておられる。しかもネット・オークションで落札されたという。驚くべし。内容にも瞠目すべきものがある。


とうてい葆堂の日録にはおよびもつかないけれど、上の写真のような明治の漢詩熱を感じられる手作りノートを、数ヶ月ほど前、某所において百円で入手した。タテ12cm、ヨコ17cm。

三宅三郎(半聾)『片仮名付百人一詩次韻集』(明治三十三年および三十五年序)の自筆稿本である。哀しいかな三宅三郎がどういう人物なのかは不明。三宅半聾の名で『明治風雅楽府』(明曻堂、一八八一年)に漢詩「偶成」一首選ばれていることだけは分った。明治三十三年に数え七十三なら文政十一年(一八二八)生まれということか。

このノートは淳和天皇(786-840)以後の百人による漢詩とそれらに自ら次韻した(同じ韻を用いて応じた)漢詩を並べて構成されており、人選の変更や校正の跡がそのまま残されている。ただし漢詩には推敲の跡が少ないので、おそらく定稿に近い段階だったのだろう。序文からすると出版のあてがあったのかも知れない。

菅原道真の『新撰万葉集』にちなんだものという自序。明治三十五年は道真の一千年忌に当ると書いている。道真が歿したのは延喜三年(九〇三)。

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もう一種類の自序。仮名交じりになっている。両方掲載するつもりだったか。

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収録人名一覧(一頁目)。ここにはまだかなり変更の跡がうかがえる。テキストは『皇朝千家絶句』(博文館)、或写本、文久二十六家絶句、『太陽』(博文館)十周年季祝寄贈の詩から選んだとのこと。

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漢詩頁の引用は一例だけにとどめるが「片仮名付」とあるように初学者にも読みやすい工夫がなされている。次韻というのは、このページで言えば淳和天皇の「花」「遠」「家」を使って内容にも応じた漢詩を作る、その手法である。

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以下、目次に名前の出ている人物。( )は収録せず。重複は省かれている。誤記もあるようだ。

淳和天皇
有智子内親王
藤原衞
石上宅嗣
源順
釈空海
菅原是善
記長谷雄
菅原道真
田口達音
嶋田忠臣
菅原文時
橘倚平
源孝通
大江匡房
細川頼之
足利義昭
武田信玄
上杉謙信
石川凹
細川藤孝
伊達政宗
新納忠元
藤原惺窩
林道春
林鳳岡
伊藤担菴
京師 留女
木下順庵
山崎闇斎
伊藤仁斎
貝原益軒
室鳩巣
物徂徠
伊藤東涯
柳川滄洲
新井白石
太宰春臺
服部南郭
祇園南海
山県周南
中井竹山
頼山陽
田能村竹田
鎌田
亀井
南郭[重複]
梁川
深野
杤原
秋月
東湖
宮崎
草葉
古閑
竹添
武田耕雲斎

草場珮川
落合雙石
石野雲嶺
劉石秋
後藤松陰
斎藤拙堂
大槻磐渓
広瀬旭荘
藤井竹外
家長韜菴
村上仏山
澤井鶴亭
遠山雲如
日柳柳東
大沼枕山
森春濤
仲村淡水
山中静逸
鈴木松塘
鷲津毅堂
高階春帆
河野秀野
宇田栗園
柴秋村
高橋古渓
五岳道人

伊藤春畝
山県含雪
東久世竹亭
(勝海舟)
土方泰山
田中青山
芳川越山
長松秋琴
(楠本西洲)
股野藍田
三島中洲
(野村索軒)
重野成斎
岡本黄石
(秋月天放)
日下部鳴鶴
大嶋如風
前島鴻爪
西岡宜軒
角田九華
田能村直入
入田披雲
赤座再生

by sumus2013 | 2017-03-28 20:54 | 古書日録 | Comments(4)
Commented by 中嶋康博 at 2017-03-28 22:35 x
御紹介ありがたうございます。
懐事情が変化して欲しい詩集は手が出なくなりましたので、今後は先師顕彰活動と並行してこちらの方面もゆるゆる研鑽して参ります。おみまもり下さいませ。
しかし斯様の冊子が百円で入手とは。京都恐るべしです。
Commented by sumus2013 at 2017-03-29 08:05
近世から現代への「詩」の流れは断絶させないで考えなければならないと思っております。その意味でも素晴らしいお仕事です。今後も期待しております。京都でも古い資料はだんだん出なくなってはいますが(古書店がひとつ減ると大きいです)、まだまだこのような書き物に出くわすことがあります。
Commented at 2017-03-30 20:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sumus2013 at 2017-03-31 19:00
本日拝受いたしました。有り難うございました。
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