林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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河原温渡墨作品頒布会

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某氏より頂戴した『ユリイカ』第四巻第八号(書肆ユリイカ、一九五九年八月一日、表紙=長新太)に珍しい資料が挟んであった。「河原温渡墨作品頒布会」のパンフレットである。

《今度私達の久しい友人である河原温君が、メキシコを経てヨーロッパに旅行することになりました。そこで私達友人が集つて、旅費の足しにと、かれの作品の頒布会をつくつて、ひろく愛好家の協力をえたいと存じます。なにとぞ、ご協力をお願いいたします。/河原温作品頒布会》

とあって、瀧口修造、池田龍雄、飯島耕一、佐々木基一、江原順、野間宏、奈良原一高、山本太郎、針生一郎、渡辺定俊、東野芳明が短い推薦の言葉を寄せている。その頒布作品の値段を見て驚きを禁じ得ない。

 油絵(8号〜40号、1947年〜55年)……号・¥5,000
 水彩(メキシコの風物をかいた作品・予約品)……¥6,000
 デッサンA(約4号・1947年〜56年)……¥8,000
 デッサンB(2号〜3号・1950年〜58年)……¥5,000
 デッサンC(メキシコの風物をかいた作品・予約品)……¥4,000
 面(表紙の写真以外も何種類かあり)……¥3,000
 印刷絵画No.4 砦(1200部限定版)……¥800
 
コーヒー一杯の価格が六十円くらいの時代である。六倍と考えて油絵一号あたり三万円はかなりきばった値段ではあろう。河原温は一九三二年クリスマスイブ生まれだからこのときまだ二十七歳になっていない。むろん現在の物故巨匠としての地位からすればタダみたいな値段だが……それはそれとしてお面が二万円くらいならひとつ欲しいところ。

「その後の河原温」

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多摩美の瀧口修造文庫には当然ながら入っているようだが、それ以外ではちょっと珍しいものかもしれない。そこで気になるのは『ユリイカ』発売当初から挟み込みだったのか? という点である。パンフの活字と本誌の活字を較べるとどうも同じ印刷所のような気がするし、このちょっとひねったレイアウト感覚はひょっとして伊達得夫のものかもしれない。

本誌もなかなか面白い。巻頭「きのう・きよう・あす」欄の丸谷才一。伊達得夫宛に手紙を書くというスタイルの文章。仮名遣いはママ。

《伊達得夫様
 先日は写真、有難うございました。名声の高い大兄の写真術をもってしてもこの程度ならば、ぼくがカメラフェイスが悪いのは宿命的なことだ、と考えながら、負けた横綱のような顔をしてゐるぼくを眺めました。つまり大兄は大変教育的であったわけです。厚く御礼申し上ます。別便で本を一冊(ウィリーハース『文学的回想』原田義人訳紀伊国屋書店)送りました。差上げます、と言いたいところだけど、読み終わったらぜひ返して下さい。そのうちもういちど読みたい本です。》

と前置きして戦前のドイツでウィリーハースが編集していた『文学的世界』の意義について語り、伊達に対して『ユリイカ』を『文学的世界』のような雑誌にして欲しいと(かなりまだるっこしい書き方で)提案し、こう付け加える。

《大兄はおそらく、そんなことをしたら売れなくなる、今のやり方がギリギリの抵抗なのだ、と呟くでしよう。そのときの声や表情まで、判るような気がする。だけどぼくは、損はしないでしかももう一歩前進することはできないものだろうかと、敢えて苦言を呈するのです。
 伊達さん、ぼくを含めて、人々がみな大兄の商才をたいへん高く評価していることを忘れないで下さい。そう、すくなくとも大兄の写真術などとは比較にならぬくらい高く評価していることを。

……商才があるとは興味深い評価ではないか。

この『ユリイカ』はジャック・プレヴェール特集。谷川俊太郎の寄稿「惚れた弱み」の冒頭に翻訳についての考えが披瀝されていてなるほどと思った。

《アテネフランセに二年間も通っていたくせに、僕はフランス語がからきし出来ない。だから僕がいくらプレヴェール、プレヴェールと云ったところで、それは日本語におきかえられたプレヴェールのことなのです。それじゃ困ると云う人もいるだろうし、それで結構と云う人もいるでしょう。ほん訳じゃ絶対に分らない部分もある代りに、ほん訳で読んでさえ分りすぎる程分る部分もあると思います。ほん訳じゃ絶対に分らないところは、フランス人にまかせておいて、僕はもっぱら、ほん訳でも分る方を楽しむことにします。プレヴェールって詩人はそれでも結構楽しめるのではありませんか? 勿論ほん訳で読んでいるせいで、とんでもない誤解をすることだっておおいにあり得ますが、それならそれでいいと思います。プレヴェールを正確に理解することは、僕にとってそんなに大切なことではないとも云えるのです。プレヴェール流に云えば、僕はプレヴェールを考えない[四字傍点]で、プレヴェールを眺める[三字傍点]のが本当は好きなのです。ここだけの話ですが、それよりももっと好きなのは、プレヴェールを夢見ることです。》

これは谷川氏の言うのが正しいとかどうかではなく、そうするしかないのだな、外国文学を読むためには。参考までにプレヴェールの翻訳についての過去記事を引用しておく。

ジャック・プレヴェール『歌の塔』

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by sumus2013 | 2017-03-06 21:48 | 古書日録 | Comments(0)
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