林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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驕子綺唱

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平井功『爐邊子随筆抄』(書肆盛林堂、二〇一四年一〇月二六日、表紙デザイン=小山力也)にひきつづいて『詩集 驕子綺唱』(書肆盛林堂、二〇一七年二月一九日、表紙・タトウデザイン=小山力也)が上梓された。ひとまず慶賀なり。

   Lopez, the Untamed

 野に棲む小獣のやうに
 私は誰にも馴されなかつたものだ
 私を馴さうとした人も幾人[いくたり]かありはしたが

 吾妹子よ お前が現れた時
 私は進んでお前に馴されたものだ
 幾代も 家畜として飼はれてゐたかのやうに

 氣にはしないでお呉れ
 野に棲んだころの荒々しいこゝろが
 飼はれて後もふと甦つて來るやうに
 今も時折は 折にふれて
 荒々しい情[こころ]が
 昔の儘に湧き立つこともあるがーー
 吾妹子よ 今も時折は
    折にふれて


栞としてタトウに収められている長山靖生「解説・あとがき」によれば、第二詩集になるはずだった『詩集 驕子綺唱』には平井功自身が用意した原稿が残っていた。しかしながら《幾人もの優れた出版人が熱を上げたにもかかわらず、生前に平井功が意図した造本装釘を実現しようとの理想を追うあまり、今日まで印刷刊行されるには至らなかった》ということである。たしかに松本八郎さんにもそんな話をうかがった覚えがある。松本さんも平井功の遺志を継ごうと努力しておられた一人だったが。

《昭和末期までは確かに、平井家に原稿が残っていたようだ。しかし功の子息で翻訳家の平井以作が亡くなった後、某氏が平井家にお願いして生原稿を探して頂いたところ、どこに仕舞い込まれたのか判然とせず、所在が確認できなくなっていた。とうとう本当に幻となってしまったのかと思われた時、原稿のコピーが書肆関係者の手元にあることが分った。
 平成二十五年四月二十七日、知人から『驕子綺唱』を出版するので手伝わないかとの誘いを受けた。私にとっては唐突な話だったが、御遺族の御理解、許諾も受けているという。その場でいきなり手書きの原稿のコピーとデータを渡された。もはや遁れようのない悪魔の誘惑だった。》

小生もこのコピーなるものを見せてもらった記憶がある。あれはいつどこでだったか……。

小出昌洋「随読随記」に平井功のことが書かれている

《その後、平成二十五年六月にパイロット版として八十部を限定して非賣品として刊行。平井功、日夏耿之介の研究者、関係者を中心に、詩歌に詳しい方々に読んで頂き、御教示を仰ぐことにした。》

《本来なら、今回の「第二次パイロット版」では、それらの指摘を受け入れ、少なくとも明らかな誤記と判断できるものは訂正した上で刊行すべきだと私個人は考え、そのように書肆側に伝えたが、今回はあくまでパイロット版をより広い読者に読んでもらうのが趣旨とのことで、訂正無しでの刊行となった。近い将来、より完璧を期した「正規版」の刊行を別に考えているとのことである。》

なるほど、いろいろな考えがあるものだが、たしかに完璧を求めすぎては出るものも出せなくなる。ただし平井功の造本意匠へのこだわりはテキストよりも(よりもは言い過ぎか、同じくらい)重いはず。詩集という存在(書物と言い換えてもいい)の意味を平井功は見抜いていた。本を愛する誰もが完璧を期したくなる所以である。

詩集 驕子綺唱 書肆盛林堂

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by sumus2013 | 2017-02-18 21:07 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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