林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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黄いろにうるむ雪ぞらに

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 黄いろにうるむ雪ぞらに
 縄がいつぽん投げあげられる

  バンス! ガンス! アガンス!
  ちょよろちよろしたこどもらをかり集めて 
  制服を着せて
  何か教へるまねをする
  やくざなはなしだ

 でんしんばしらの斉唱と
 風の向ふで更に白々饑ゑるもの


『宮澤賢治全集』第二巻(文圃堂書店、一九三五年九月二〇日、装幀=高村光太郎)より「(黄いろにうるむ雪ぞらに)」全文。( )は仮タイトル。『春と修羅』第四集に収められている。そう言えば以前十字屋書店版を紹介したことがあった。

『宮澤賢治全集』(十字屋書店、一九四〇年、装幀=高村光太郎)

本日は京都市内にもかなりの雪が積もった。じゃあ雪の詩でも引用しようかと思って『宮澤賢治全集』第二巻をひもといたのであったが、意外と雪の詩は上のくらいしかなくて、しかしその代わり「丸善階上喫茶室小景」と題する作品を見つけてうれしくなった。「東京」七篇のうち。喫茶室の様子が巧妙に描写されているので全文引用しておく【喫茶店の時代】。


 ほとんど初期の春信みたいな色どりで
 またわざと古びた青磁のいろの窓かけと
 ごく落ついた陰影を飾つたこの室に
 わたくしはひとつの疑問をもつ
 壁をめぐつてソーフアと椅子がめぐらされ
 そいつがみんな共いろで
 たいへん品よくできてはゐるが
 どういふわけかどの壁も
 ちやうどそれらの椅子やソーフアのすぐ上で
 椅子では一つソーフアは四つ
 団子のやうににじんでゐる
  ……高い椅子には高いところで
    低いソーフアは低いところで
    壁がふしぎににじんでゐる……
       そらにはうかぶ鯖の雲
       築地の上にはひかつてかゝる雲の峯
 たちまちひとり
 青じろい眼とこけた頬との持主が
 奇蹟のやうにソーフアにすわる
 それから頭が機械のやうに
 うしろの壁によりかゝる
    なるほどなるほどかう云ふわけだ
    二十世紀の日本では
    学校といふ特殊な機関がたくさんあつて
    その高級な種類のなかの青年たちは
    あんまりじぶんの勉強が
    永くかゝつてどうやら
    若さもなくなりさうで
    とてもこらえてゐられないので
    大てい椿か鰯の油を頭につける
    そして十分女や酒や登山のことを考へたうへ
    ドイツ或は英語の本も読まねばならぬ
    それがあすこの壁に残つて次の世紀へ送られる
      向ふはちやうど建築中
      ごつしん ふう と湯気をふきだす蒸気槌
      のぼつてざあつとコンクリートをそゝぐ函
 そこで隅にはどこかの沼か
 陰気な町の植木店から
 伐りとつて来た東洋趣味の蘆もそよぐといふわけだ
    風が吹き
    電車がきしり
    煙突のさきはまはるまはる
 またはいつてくる
 仕立の見本をつけた
 まだうら若いひとりの紳士
 その人はいまごくつゝましく煙草をだして
    電車がきしり
    自動車が鳴り
    自動車が鳴り
 ごくつゝましくマツチをすれば
    コンクリートの函はのぼつて
    青ぞらの青ぞらひかる鯖ぐも
 ほう何たる驚異
 マツチがみんな爆発をして
 ひとはあわてゝ白金製の指環をはめた手をこする
   ……その白金が
     大ばくはつの原因ですよ……
       ビルデングの黄の煉瓦
       波のやうにひかり
       ひるの銀杏も
       ぼろぼろになつた電線もゆれ
       コツカのいろの窿穹[ドーム]の上で
       避雷針のさきも鋭くひかる


じつに興味深い。それにしても詩人は丸善へ入ると何か爆発させたくなるもののようだ……。



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by sumus2013 | 2017-01-15 21:05 | 古書日録 | Comments(0)
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