林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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いのちひとつに

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昨日紹介した『婦人公論』第四百六十七号には佐野繁次郎も登場していた。舟橋聖一「愛の濃淡」挿絵。もうひとつ、注目したのは奥村博史(「おくむらひろし」のはずだが、本誌では「おくむらひろふみ」)の連載小説「いのちひとつに 続・めぐりあひ」。奥村博史と言えば築添正己さんの母方の祖父ということで当方のブログでも少し触れたことがある。

「博史とらいてう」

「いのちひとつに」は小説というか回想記のようなものだろう。登場人物はいちおう仮名になっているが、誰だかはすぐに分る。主人公は浩、その恋人は昭子(らいてうの本名は明[はる])、森田草平が成田草平など。面白いと思ったのは『田端人』矢部登さんの影響か、二人が日暮里のステイシォンで待ち合わせをするくだり。大正元年の七月。

《三十日の暮れに、日暮里のステイシォンのプラットフォウムで待ち合わせた浩と昭子は、駅を初音町の方に出ると道灌山に向って歩いてゐた。
 忙[せわ]しく人の行交ふ複雑した臭の漂ふ通りから遁れて、ふたりは似たやうな生垣ばかりつづく長い道を過ぎ、雑木林の中を抜けて、いつか田端ステイシォンの崖上に出た。
 雲は低く垂れて蒸し暑く、車両編成を待つ幾台もの蒸気機関車はしきりに黒い煙を吹き上げ、それが時をり風に送られてきて不意にふたりともに噎せた。浩は煤煙の甘酸っぱい鼻に辛く、足はしぜん動坂へ出る道に向った。赤紙仁王の脇の坂を降りながら、近くのつくし庵のしるこよりほかあてもなく、どこかで夕飯を、と考へたが、けっきょく団子坂の藪蕎麦に行くことにした。》

《藪を出たふたりは、団子坂をのぼると左に、森鴎外の家のあるあたりまで行ったが、引き返して林町の寂しい通りへはいった。繋いだ手から互いの心に通ふものを感じながら黙って歩いた。》

《とつぜん足を停めた浩はとっさに昭子を羽交締にした。昭子は仰向いて彼に口を寄せて来る。互いの唇が飢ゑた魚のやうに烈しく触れ合ふと、そのまま堪へられる限り息を詰めた‥‥。すると、ふたり共どもそこに崩折れてしまふかとばかり身を支へかねて来たが、危く立直った‥。
 右に折れ左に曲り、ふたりは宛もなく歩くうちにいつか袋小路に追ひ詰められて、とある寺の裏に突当ってしまった。》

《本堂横手に出ると墓場である。竝んだ墓は夜空のもとに押黙って立ってゐる。》

《寺の門を出たふたりは、駒込通りを横切ると、すぐ向う側の、曙町につづく路地に姿を消した‥。

この辺りのルートについてはおぼろげなイメージしか湧かないが、燃える恋人たちにとっては人目に立たない散歩コースだったのだろうか。なかなかに大胆である。



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by sumus2013 | 2016-12-25 21:01 | 古書日録 | Comments(0)
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