林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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おもかげ

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永井荷風『おもかげ』(岩波書店、一九三八年七月三〇日二刷)。下鴨で三冊五百円のうちの一冊。二刷、函が傷んでいるので、まあそんなところ。函の背が抜けていた。似た色の厚紙をピッタリの大きさに切って蓋をした。糊は木工用ボンド。輪ゴムで固定する。
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表題作の「おもかげ」に喫茶店が登場する。主人公はタクシーの運転手。たまたま死んだ女房にそっくりの踊子を見つけて毎日のように浅草の劇場に通っている。そんなとき偶然に雑沓でその踊子「つゆ子」を見かけ、彼女のあとをつける。

《やがて此の裏通が又もや賑な通を突切つて向側に並んださま〴〵な飲食店の中で、硝子戸の外にコトヤ喫茶店とかいた白い暖簾の下げてある店へ駆け込んだ。
 覗いてみると、さほど広くない店の正面には、どこの喫茶店にもあるやうな洋銀の銅壺がひかつてゐて、白い上着に白い帽をかぶつた男が二人。見渡す壁には油絵らしい額の間に、ココア拾銭、コーヒ五銭、ホットドッグ五銭など書いた紙が貼つてある。ぢゞむさい小娘が二三人、長いテーブルのあちらこちらに坐つてゐる入込みらしい客の前に物を運んでゐる。客の中には新聞を読んでゐるものもある。

露子は踊子仲間と合流したのだった。「おれ」は隅のテーブルに座ってコーヒーを注文して露子の様子をじっとみつめていた。

《露子さんはおれと同じコーヒーにジャミトーストをあつらへ、その出来あがるのをおそしとコップを取り上げたのに、始めて気がつき、おれも同じやうにコップの取手へ指をかけようとして、見るともなく見ると、袖口の白いシャツに、何だか赤いものがついてゐる。赤いのは血なんだ。手首のところ、二寸ばかり、引掻いたやうに疵がついてゐる。そして腕時計は物の見事になくなつてゐるぢやアないか。はつと思つて、ヅボンの尻のかくしに入れた銭入を探すと、これも無い。》

おれは主人にわけを話して金を取りに帰ろうとする。

《手首の疵とシャツについた血とが何よりの証拠だから、店の人も見てゐるお客も、みんな気の毒さうな顔をする。店のおぢさんは、コーヒーの一杯ぐらゐ、おついでの時でようござんすと云ふ。其傍から露子さんが、「アラ痛さうね。」と眉を寄せ、「おぢさん何か薬でもつけてお上げよ。」と云つてくれた。其声は死んだおのぶとはまるで違つてゐた。年も傍でよく見ると、大分上で、二十五六にはなつてゐるらしい。然しおれは涙のでるほど嬉しかつた。拝みたいほどありがたかつた。》

……この後には悲劇が待っているのだが、それはいいとして、白い暖簾、白服のボーイ、洋銀の銅壺、油絵などの昭和初期の喫茶店の雰囲気がみごとに描かれていると思う。

この本には荷風の写真が二十四葉収められている。大方が東京の街景である。そのなかから「牛籠舊居」。

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次は偏奇館だろうか書斎の一隅。

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他にもいろいろとオマケが付いていた。それも気に入ったのだが。まず前見返しに蔵書票「AKEDO'S LIBRARY」。後ろの遊び紙には半分剥がされた大阪大丸書籍売場のレッテルと蔵書印「平野蔵書」。

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もうひとつ荷風の検印。ちょっと変った文言。

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薄いけれど「永井氏著作権章」だろう。明治時代の初め頃にあったような文句である。

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by sumus2013 | 2016-10-06 21:38 | 喫茶店の時代 | Comments(0)
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