林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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あの時みんな熱かった!

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星野画廊で開かれている「現代美術の先駆者たち・関西」(〜9月10日)を見る。一九五〇年代から六〇年代にかけてフランスなどのアンフォルメル運動に刺戟された日本の作家たちの作品、星野コレクションから選り抜き、が展示されていて当時を直接知らない者としては非常に興味深かった。例えば上の作品は須田剋太「宇宙時代の記号」(一九五九年)。須田剋太といえば司馬遼太郎とのコンビで大衆的な人気を得たのだと思うのだが、アンフォルメル時代にはこんな絵を描いていた。かなり前だが須田の大作で非常にいい抽象画を見たことがあって、もっと数を見てみたいなと思っていた。ちょうど今回の展示で七〜八点ほど並んでいた。どれも佳作だった。星野さんによると、何年か前にこの抽象のシリーズで大量の贋作が出回ったことがあったのだそうだ。贋作が登場するくらい人気があったという証拠ではあったが、そのために現在では須田のアンフォルメル作品は安くなってしまったそうだ。ということは買い時だとも言える(ただし目利きが必要)。須田以外も注目すべき作品ばかりだったのだが、やはり三上誠が抜けている。とくにここに掛かっていたのはいずれも名品だった。

星野さんから近代美術館へ移動。「あの時みんな、熱かった! アンフォルメルと日本の美術」(〜9月11日)を見る。手際よくアンフォルメルの流れを並べてみせていた。熱かった! というわりには、展示はクールだった。総花的で教科書的だったかも。もう少しマニアックに熱くてもよかったように思う。それは星野画廊に任せるということでもないだろうが、ふたつを同時に見るのがよろしい。井上有一と東松照明(「ワックスマンの胸」他)が印象に残った。三上誠も数点展示されていたものの星野画廊にあったものの方が数段良かった。

同時開催、京都のマネキン製作会社に焦点を当てた「七彩に集った作家たち」は画期的な企画だと思うが、もっとちゃんとした大きな展示にすべきだった。こじんまりとまとめてこの会社の面白さが伝わり切っていない。個人的に七彩に勤めていた人を知っているが、ユニークな人ばかりだった。せっかくの機会、そのへんもっと掘り下げてほしかった。

***

内田魯庵『蠹魚之自傳』より焚書の話をもう少し。

《昔の咄は本に限らず何でも大きいから余程割引して聞かにやアならねエ。ヂスレリー伯父さんの『文献異聞』(Curiosities of Literature)にコテコテに列べ立てた各国の焚書も丸々ウソぢやアあるめエが、四千軒の風呂屋が半年燃料[たきつけ]にして湯を沸かしても焚き尽せなかつたといふアレキサンドリヤの焚書なぞは嘘月村の鉄砲矢八の洞喝咄[ほらばなし]よりもうまく出来てる。が、五度や六度ぐれエは書物で沸かした風呂で兵隊に汗を流さしたかも知れねエ。

参考までにエル=アバディ『古代アレクサンドリア図書館』(中公新書、一九九一年)によれば、アレクサンドリア図書館には少なくとも五十万冊はあったようである(書籍と巻物を含む)。また当時の書籍の表紙は板だった可能性もあるから風呂の焚き付けにはもってこいだったかもしれない。

《何も千年二千年前の大昔の話を持出さねエだつて、ツイ先年[こねいだ]の日清日露の戦争の時にだつて本で焚火をしたり湯を沸かしたりした咄はある。宋槧本や元槧本で沸かした瓶風呂で垢を落した罰当りの中に金鵄勲章を貰つた奴があるかも知れねエ。西洋でも日本でも戦争の為め或は政治や宗教の迫害の為め亡びた書物はドレほどあるか計られ無エ。書物の破壊者として俺達よりも罪の深エのは人間の無知だが、一番暴虐な大破壊者は政治や宗教の迫害で、夫から比べると俺達のはホンのチヨツケイを出すぐれエな悪戯で罪は無エのさ。

『陶庵夢憶』のすでに紹介した三代の蔵書でも兵火で本が焼かれる話が出ていた。

《あとに残った分は、邸を占拠した方(方国安)の兵が、毎日ひき裂いては煙にし、また銭塘江の岸に舁いで行って、鎧のなかに敷いたり、矢玉を防ぐしろにしたりして、四十年間に積んだものが、これまた一日にしてことごとく失われた。》

魯庵は、いや、シミ君は、日本において政治的に抹殺された書物の代表的なものとして切支丹本を挙げてそのお門違いな弾圧をこう形容している。

《版式から云つても特異で、整板活字總括[つゝくる]めて日本の古版の王だつて家の大将なんかは褒めちぎつてる。さういふものを焼いて了うつてのは国家の為めに悪魔の使者を斬つたツモリだらうが、丁度臆病者が幻覚の為め錯迷して刀を指廻して罪もねエものに怪我させたやうなものだ。》

古版の王と言っているのは『こんてむつす・むんぢ』のことである。

こんてむつすむん地

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by sumus2013 | 2016-09-08 19:49 | 雲遅空想美術館 | Comments(0)
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