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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


芳水詩集

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有本歓之助『芳水詩集』(實業之日本社、一九一五年二月一〇日十三版)装幀、挿絵は竹久夢二。夢二の本はどれも高価なのでほとんど持っていないが、少々いたんでいても安ければ買いたくなる。これも安かった。初版は大正三年。もうすでに夢二の時代が訪れている。本書を見てもアールヌーヴォを竹久流にうまくアレンジして厭味がない。

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別刷りカラー口絵


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    絵草紙

  従弟と二人で絵草紙を
  裏の倉から持ち出して
  春の日向で見てゐたら
  銀の声して鳥が啼く。

  赤い表紙はちくちくと
  若い二人の眼にしんで
  八重垣姫や清姫が
  夢見るやうになつて来る。

  古い絵本の手ざはりに
  少さき吐息の遣瀬なや
  ついしみじみと見てゐたら
  知らぬ間に日が暮れた。



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押し花が……クローバー?


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本文最終頁に「悲しき哀なる詩集よ、/我は永久に是を愛す、/ヒアシンスの君/直、」……なんともはや。お相手は


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記名主「Fushimi Mkaijima/T. Ban」だろうか。裏表紙では「Fushimi Mukaijima/Toyoko Ban」と正しく書けている。伏見区向島。

by sumus2013 | 2016-09-05 19:24 | 古書日録 | Comments(0)
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