林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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エロスの人

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『花形文化通信』(繁昌花形本舗)のバックナンバー、最終号(100号、一九九七年九月)までのいくつかを見ていると面白くて時間を忘れる。巻頭のインタビューが目玉。けっこうな有名人が写真入で紹介されている。写真もいい。編集長=塚村真美、編集=嶽本野ばら、児玉知子、デザイン=永原康史事務所、執筆者は多数。写真は今田修二、岡島慎一郎、福永幸治、高木昭仁ら。

ここでは91号(一九九六年一二月一日。トップは大竹伸朗、インタビュー・構成=嶽本野ばら)の「エロスの人 好色美術研究家 山本芳樹」を紹介しておく。山本氏にはその昔お世話になった。

家見れば値踏みする吾去年今年


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出だしのところは読めると思うので省略。このつづきは以下の通り(改行を一行アキにした)。

《着流し姿の小柄な老紳士。他に目につくのは本、本、本。本の間をくぐって通された部屋の壁には、小村雪岱の「お伝地獄」の版画や加山又造の描く裸婦、それに10年ほど前からプリントを購入しているというイリナ・イオネスコのポスター。しかし阿修羅像などの仏像の写真、静物画や燭台なども同じように飾ってある。

「発禁書を蒐集していると思っている人もいるけど、購入した本がたまたま発禁になっただけ。エロスの文学から入り、挿し絵本、オリジナル銅版画本、創作画集、というふうに集まってきました。もともとは日本の三大奇書といわれる『末摘花』『はこやのひめごと』『大東閨語』などの性が描かれた古典文学に始まり、中国、ヨーロッパ、と林の中へ分け入っていくようなもんですなあ。密林の奥へ迷い込むと出られない。ほっほっほ。病気やから、これはもう死ななきゃ治らないねえ」

 山本氏は山陽電鉄に勤務していたサラリーマン時代、「妻子のために働かない、好きな本のために働く」と宣言。実際、作品を買うために、お嫁入りの資金を貯めていた娘から、お金を借りたほどである。》

《バイロスの他、ベルメールやモロー、クリムト、ギーガーなど、世紀末の幻想芸術やその末裔たちの作品を愛してやまない山本氏。「好色美術研究家」の他「世紀末芸術研究家」の肩書きも持つが、やはりこの人はエロスの人だ。

 なぜなら、絵を説明される時の「ここに男根が」「このヴァギナの」と、氏から発せられる言葉の一つ一つが、なんともエレガントな響きでしたから。

 帰り際、山陽電鉄と聞いた時から気になっていた質問を一つ。「須磨浦山上遊園にあった『ドレミファ噴水パレス』は、ひょっとして先生のお仕事だったのでは?」「そうです。噴水にドームをつけたり、ステージで演奏したりするのは僕のアイデアでした」。長い間の疑問が晴れた。あの不思議な噴水の源泉は、エロスだったのか、と。》

記事は編集長の塚村さん。よく書けている。山本氏の雰囲気を上手に伝えていると思う。

山陽電車 ドレミファ噴水パレス CM


記事では《昭和30年代に建てられたであろう実にプレーンな団地》に住んでいるとあるが、小生も一度だけそこを訪問したことがある。最初に京都に住んでいた頃に知り合って、その後、神戸に転居した。そのときに山本氏の知人を集めて歓迎会のようなことをやってくれたのであったと記憶する。

たしか日記にその日の写真を貼付けたな、と思って探し出してみた。まさに壁一面が本、本、本であった。一九八六年八月三日。ちょうど三十年前……

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《18:00山本氏宅着。いろいろお話を伺いながら蔵書票など見せていただく。年末ころ栃木の美術館で蔵書票とさし絵本の展らん会があるそうで、そこへバイロスとドレを貸し出すと言っておられた。また内田市五郎氏の話が出て、練馬にケヤキが4〜50本も生えている屋敷があり、土地持ちで、先頃ユウショウドーから売りに出た1万7千点の書票を、4百数十万で購入したなどということらしい。》

写真中央のマドンナは垂水駅前で喫茶店を経営しておられる方。後日、その店を訪ねてみたら山本氏と共通する趣味だったなあ……などと思いつつ検索してみると最近の店の様子をアップしているブログを発見した。

垂水・茶房「伽藍洞」

山本芳樹さんの蔵書は歿後に売りに出された。京都でビルの一室を借りて展示即売されたときに覗いた記憶がある。その前に神戸だったか大阪だったかでも即売されており、すでにこれという本は残っていなかったように思う。蔵書一代とはよく言ったもの。


伊藤文学氏が山本氏との交流を書いておられる。

「バイロス蔵書票展」がヴァニラ画廊で!

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by sumus2013 | 2016-09-02 21:25 | 古書日録 | Comments(0)
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