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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


小学読本便覧

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水渓良孝抄録、遠藤茂苹書画『改正小学読本便覧』(田中治兵衛=文求堂、一八七六年二月発兌)。水渓良孝については以前も紹介したことがある。

水渓良孝編『小学入門便覧』

遠藤茂苹については不明。五雲斎と号し、他に『内外國旗暗誦表』(水谷仁兵衛、一八七二年)、『小学入門便覧』(田中文求堂、一八七七年)、『小学入門便覧』(山川圓々堂、一八八〇年)の書画を担当している。後二者は同じ水渓良孝の編輯ながらリンクした『小学入門便覧』は国井応文画である。どう違うのだろう?

読者の方より御教示いただいた。「遠藤茂平」で検索すれば著書等いろいろと出て来ると。なるほど、クサカンムリなしですか……。

宮川禎一「描かれた古墳出土品—明治十四年の発掘調査—」@京都国立博物館『学叢』ホームページ版 第27号
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この『学叢』の論文中(p.92)に、「遠藤茂平の業績は、幕末史研究者である多田敏捷氏によると、幕末の京都で出版業を営み、維新直後は新政府太政官の印刷業務などを請け負っていたという。また京都国立博物館が収蔵する「伏見鳥羽戦争図草稿」を描いた遠藤蛙斎と同一人物である。」とあります。

遠藤蛙斎の「伏見鳥羽戦争図」は実際に目撃したのかどうかは別として、なかなかリアルなデッサンで、当時の状況を身近に感じさせてくれるもの。出版業もやっていたとは興味深い人物である。


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この本、表紙は少しいたんでいるものの色刷り口絵が良い状態で残っている。左下隅に「五雲斎茂苹画」と署名がある。明治初めの小学校の授業風景。色分けされた日本地図のスクロール、「精神一到何事不成」(朱子語類より)の大きな額、そして唐草の布で覆われた台の上には地球儀と立体模型、教科書は和綴じ本、生徒も先生も袴に西洋靴、椅子はベンチで床板がチェッカーになっている。ごちゃまぜのパスティーシュ、まさに転形期を絵に描いたよう……って絵でした。

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定価は朱印で「定價拾五銭」、検印は著者による「良孝」朱文角印。著者の住所は「京都府下下京第十八区萬寿寺通烏丸東入四百九十五番屋敷」……烏丸五条の近くだ。


小さな木版のカットがたくさん入っている。これが楽しいので明日以降いくつか取り上げて見たい。


by sumus2013 | 2016-08-25 20:54 | 古書日録 | Comments(0)
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