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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


湯川成一氏をはげます会

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珍しい出版資料を拝見する機会があった。「湯川書房 湯川成一氏をはげます会」の案内一式である。まず封筒(実際には宛名があるが、念のために消しておいた)。裏面は印刷なし。消印は昭和四十八年九月八日。

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発起人 大阪 本の会
事ム所 東住吉区田辺東ノ町六丁目(水上方)
連絡先 大阪市北区宗是町 大ビル
〒530 いづみ書店
TEL(441)四三一二

「いづみ書店」は大阪ビル(ダイビル)にあった書店で経営者の泉啓一は愛書家の集り「大阪本の会」の世話役だったそうだ。また肥田皓三や谷沢永一らとも親しくし、谷沢の『執筆論 私はこうして本を書いてきた』(東洋経済新報社、二〇〇六年)にはいづみ書店で「内藤湖南著書展」が開かれたことについての記述が見える(……この辺りのことはいつもコメントをくださるFさんにお聞きするのがいちばんなのだが、今春に亡くなられたと聞いてショックを受けているところである)

大ビルと言えば、小生も九年ほども前にプラトン社のトークショーに参加したことがあったのを思い出した。渋いビルだったが、取り壊されてしまった。

プラトン社 大大阪モダニズム出版社

封筒のなかには和紙にガリ版というシブい案内状と返信用葉書がそれぞれ一枚。案内状はA4より少し大きめなので全体をスキャンできないため左右に分けて取り込んだ。ご覧のように朱と緑は手彩色である。

《彗星の如く突如として出現した湯川書房は、その處女出版 辻邦生 小説「北の岬」を開板以来区々数年を経ずして次々と珠玉の作品を限定上梓し忽ちにして出版界内外のひとしく瞠目するところなりました。》

辻邦生『北の岬』(湯川書房、一九六九年二月二八日)

『季刊銀花』で紹介されたのを機に小川国夫、塚本邦雄、庄司浅水らを招いて九月二十二日に中ノ島グランドホテルで催されたということのようだ。会費四八〇〇円。記念写真代金含むとあるから、記念写真を撮影したわけだ。これは見て見たいものだ。

『季刊銀花』湯川の限定本


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見ておきたかったと言えば、二十二日〜二十七日にかけて湯川書房の全作品をいづみ書店で展示したそうなので、これも見ておきたかった展示である。もちろん小生は讃岐高松の高校へ通っているころなので、在り得ようもないことなのではあるが。

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透かしかと思ったら、版画のようである。向かって左に「本」、右に「鳥の絵と正の字」が刷られている。

by sumus2013 | 2016-08-06 21:17 | 古書日録 | Comments(0)
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