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川崎彰彦傑作撰『川崎彰彦傑作撰』(中野朗・中山明展、二〇一六年四月九日、装幀・装画=粟津謙太郎)読了。早く紹介したかったのだが、やはりこのボリューム(A5判395頁)、簡単に読飛ばせなかった。つい引き込まれて読みふけったと言っていいだろう。 《「死後何年経ってからでもよい、短編集を出して友人たちが本を肴に飲む会を開いてくれるなら、これに過ぎる喜びはない」ーー川崎さんの夢がついにかないました。寡作の作家、二十二冊目の本です。 川崎さんのパートナー当銘広子さんが本づくりを快諾、装幀は生涯の友人の版画家粟津謙太郎さんにお願いしました。関西での文学や酒の友だった中尾務さんや三輪正道さん、札幌の中野朗さんが散逸していた作品を集め、多くの人たちが力を合わせてつくり上げた一冊です。》(中山明展「あとがき」) 第一部遺言編、第二部傑作撰から成る。アンソロジーは難しいもの、正直、第一部遺言編を読み終ったころには、おや? これでいいのかなといぶかしく思った。しかし、目玉ともいうべき傑作選のI「少年〜大学時代」およびII「記者として」に突入するや俄然おもしろくなる。川崎彰彦というどうしようもない「破滅型」の男の人生にハラハラさせられ通しなのだ。 「傑作撰」というタイトルもあまり好きではないにもかかわらず「傑作撰」にふさわしい内容なのではないかとさえ思えて来たのだ。大きな山を越えた後は「大阪文学学校と酒」「同人誌の達人」というより抜きのエッセイ類で余韻を楽しむ。もちろん中野朗編略年譜も完備。読後感は「これぞ現代の円本(エンポン)!」。きわめて充実した一冊本選集だ。本体定価1852円! 間違いなく円本より安い。 めい展・じゃあなる(中山明展氏ブログ) 川崎は昭和二十一年に滋賀県の八日市中学(現八日市高校)に最後の旧制中学生として入学した。「どぶろくの詩」には当時の読書体験が記されていて興味深い。 《角は林田のぼくの家にきて親の本棚からドストエフスキーの「罪と罰」を借りて帰ったりもした。なまけ者のぼくは長い小説はかなわんのでガルシンの「紅い花」を読んで対抗したりもした。そういえば、なぜか「狂気」ということが二人のあいだでの共通の感心であり、憧れでさえあったのは頬笑まされる。》 《芥川の「河童」が話題になったこともある。ぼくは戦時中から改造社「新日本文学選集」の火野葦平集で「花と兵隊」や「糞尿譚」を愛読していたので八日市の金屋大通りに面した文英堂書店で、ある日、火野葦平の戦後の著書「石と釘」をみつけ、さっそく買って帰った。》 《ぼくは、この「石と釘」をずいぶん愛読したのに角良之助には話さなかったような気がする。当時、火野葦平を愛読しているとは大きな声で言えないような時代の空気だった。なにしろ兵隊三部作の「戦犯」作家なのであった。小田切秀雄ら「文学時標」の「文学検察」も始まっていたのではなかったか。やがて二人は「新日本文学」の読者になり、ぼくはそのほかに「人民的詩精神」を標榜する秋山清や小野十三郎らの詩誌「コスモス」などを大切に思うようになる。》 明日、書物関連の記事をもう少し引用する。
by sumus2013
| 2016-05-06 20:46
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