林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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心象風景

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牧野信一『心象風景』(書肆ユリイカ、一九四八年六月一五日)。かなり久しぶりに書肆ユリイカ本を求めた。状態が悪いわりにはそこそこいい値段だった。背のフクロウ(いやミミズクか)は以前似た図案を紹介したことがある。

コキンメフクロウ

牧野の小説八編と『文学的自叙伝』が収められ、宇野浩二の解説が付されている。そこで宇野が表題作の「心象風景」を《牧野の全作品のうちでももつとも長い小説であるうへに、もつともすぐれた小説の一つである。》と書いているので読んでみたが、さほどのものとは思えなかった。ただ牧野ならではの不思議な味わいは感じられた。

主人公が彫刻家・岡のモデルとしてアトリエに通う話。その彫刻が紆余曲折を経て完成するまでのドタバタを個性的な登場人物たちをからめて描いている(全員実在のモデルがいるそうだ)。牧野らしいシーンをひとつ引用してみる。

《私は、敬意に値する岡の作品が、不幸にも「私の像」であるがために、ゆくゆくどんなに私の為に酷い扱ひを蒙り、稍々もすれば気狂ひのやうになつて擲つたり蹴つたりされるだらう。そしてどんなに邪魔物扱ひされることであらう! 私は近頃さう云ふ類ひの夢に脅かされてゐた。けふの明け方などは、真実にこんな夢をみた。その胸像が手もあり脚もある等身の立像になつて、私と格闘した。闇の中を、私は逸散に逃げてゐた。「彼」は待て待て! と叫んで追ひかけて来た。私は逃げるのも業腹だと気づいて、立ち直るや満身の力を込めた右腕で唸りをはらんだ半円を切ると奴の横面に稲妻のやうなパンチを喰はせた。するとまあ私の腕は肩の付け根からポキリと折れた。ところがさつぱり痛くもないので今度は左腕で素早く敵の頤を目がけて牛殺しのアッパーカットを喰はすと、その腕も亦同じやうに肩から脱けて見当たらぬところへ飛んでしまつた。私はあわてて奴の腹を蹴るとそれもバッタの脚のやうにたわいもなく脱落した。私はこいつはしくじつた、たうとう傘の化物になつてしまつた! と呟きながら一本脚で逃げ出さうとすると、奴は両腕で私の脚を掴むや有無なくぽきりと折つてしまつた。そして今度は奴が私の頭を石のやうな拳でぐわんと殴つたかと思ふと同時に、彼がキャッ! といふ悲鳴を挙げたのである。見ると、いつの間にか殴つた奴が当の生きた私で、その瞬間まで私自身であつた私は、青銅の胸像に変つて、私の脚もとにごろりと転げてゐた。》

自我の分裂、そして闘争。手塚治虫のマンガにも同じようなテーマがあったが、とにかく昭和初期の漫画的な(オノマトペの多用!)小説の代表例としてもいいような気がする。

牧雅雄作「牧野信一氏の像」



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by sumus2013 | 2016-02-10 22:20 | 古書日録 | Comments(0)
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