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春の流行「昭和三年 春の流行」(銀座松坂屋)。封筒状になっているパンフレット。封を開くと中に何枚かの新作和装のカラー図版が収められている。五枚残っているが、ノンブルは9まである。少なくとも9枚以上あった。この宛先の住所は「本郷区弓町」。封を開くと……こんなかんじ。 もう一冊、大判の『昭和三年 春の流行』ポートフォリオもある。こちらは18枚の厚紙に贅を凝らした特殊印刷(木版画のような質感のものもある)の図案を貼付けたものと、木版画の青い和服の女性像一枚が入っている。作者の名前入りのリスト一枚。草葉忠雄、稲垣稔次郎、春日井秀雄、中島須貞麿、内山正夫、佐橋岩次郎、千代宗太郎、福永俊吉。これらのなかで著名なのは人間国宝になる稲垣稔次郎であろう。福永俊吉は後に京都工芸繊維大学教授。 《流行は冬から引続いて、青の系統が力強く、春には季節に相応しいコバルト(納戸色)が中心として活躍し之と対照の必要上アップリコット(あんず色)も相当用ひられることゝ思はれます。当店では此の二色の系統を標準に提示いたします。》 《なほ別葉、人物着色図は試みに此の標準の二色の系統で全装を纏めたものであります。》 昭和三年春の松坂屋コレクションではコバルトとアップリコットをシーズンの流行色と決めていたわけだ。だから封筒の色も、また大判の方の帙の色もこれら二色が使われているのだろう。女性の服装としては和服がまだ当たり前だった昭和三年ならば流行色は着物や和装小物に焦点が当っていて当然である。松坂屋だけでなく他の呉服商も同じようなことをしていたのだろうか。実際、本当にこの二色が流行したという証拠のようなものがあればいっそう面白いと思う(例えば、小説の描写とか詩歌の句とか)。
by sumus2013
| 2016-02-08 21:58
| 古書日録
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