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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


一年後のシャルリ

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パリから京都観光に来た古本屋さんがお土産にと『CHARLIE HEBDO』の事件後一周年記念号を持参してくれた。ニュースでは聞いていたが、さすがにそう簡単には手に入らないかと思っていたので、しゃれたお土産だなと感心した。

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昨日たまたま見たTVの番組でフランスの学者エマニュエル・トッドがシャルリの事件について話していた。自著『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』(堀茂樹訳、文春新書、二〇一六年)の販促(?)に来日しているのだろう。そこで彼は『シャルリ・エブド』は質の悪い小さな新聞でフランスでは少数派のイスラム教徒を笑い者にして人種差別をあおっていた、みんなが「ジュスイ・シャルリ(わたしはシャルリ)」と言ったのには嘘(マンソーンジュ)がある、というような極端な意見を吐いていた。原著の初めには"la France a vécu en janvier 2015 un moment d'hystérie"とあるそうだ。

トッドはソ連崩壊やアメリカ帝国の衰弱を予見したことで名を成した。フランスではそういう突飛な考えを捻り出す人間がしばしば登場するが、そういった一筋縄ではくくれない複雑さがフランス人にはある(トッドも別の著書でそう論じているようだ)。たしかに「ジュスイ・シャルリ」一色だった昨年の今頃はちょっとヒステリックだったというのも頷けないわけではない。テロは文明の衝突なのではなく国内問題である、国内の不平等が要因となっており、反テロで団結するのは、為政者の失政をごまかすために利用されるだけであるとも言っていた。そして移民問題によるヨーロッパの分散をほのめかした(ユーロは残るが、という留保つきで)。この書物(『Qui est Charlie ? : Sociologie d'une crise religieuse』(Seuil,‎ 2015)、フランスではかなり物議をかもしたようだ。

日本については、もっと移民を受け入れなければいけない、完璧主義でなくカオスが必要だというようなことを述べた。昨日ここで取り上げた七福神はほとんど外国の神様だということや国技である相撲の優勝者に十年間日本人がいなかったことをトッドは知らないのだろうか。いや、日本の核武装を提案したほどのトッドだから(これは冷戦下に似たような論理を昔フランス人の知人から聞かされた、すなわち米ソ以外の第三極が必要だという理屈、に似ていると思った)、そんなヒーローばかりじゃなくて悪の要素も受け入れろと言いたいのだろうと思う。

以上記憶で書いたので正確な要約ではないことをお断りしておきます。


by sumus2013 | 2016-02-02 21:36 | 古書日録 | Comments(0)
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