林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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冬の日

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『詩・現実』第三冊(武蔵野書院、一九三〇年一二月二〇日)。編輯者は淀野隆三。編輯同人は淀野の他に飯島正、神原泰、北川冬彦。昭和五年六月創刊、六年六月まで五冊発行。三号まで淀野編輯、四冊と五冊は前田武編輯。教育出版センターから復刻版が出ている。本書はもちろんオリジナルながら裸本。カバーなければならない。

『詩・現実』第四冊(武蔵野書院刊)

『梶井基次郎全集』(筑摩書房、二〇〇〇年)の詳細な年譜(鈴木貞美編)によれば梶井は昭和五年五月に『詩と詩論』を淀野、三好達治らとともに脱退し北川冬彦の求めに応じて『詩・現実』創刊号のために「愛撫」を渡した。川端康成が「愛撫」の気品をほめた(雑誌『作品』誌上)。第二冊には「闇の絵巻」を発表した。ふたたび川端にほめられた(読売新聞紙上)。梶井の創作が充実し、また本人も手応えと自信を感じていた時期である。だが《十一月中旬、『詩・現実』第三冊のための原稿に失敗〔書簡三六二〕》してしまい旧作「冬の日」が掲載された……

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末尾に編輯部の断り書きがある。

《梶井基次郎の「冬の日」は、昭和二年に書かれ、同年の二月及び四月の『青空』に連載されたものである。最近、氏とわれわれとの通信の齟齬のために、約束の五十余枚の作品はこれを戴き得ない事情になつた。それがためにわれわれは無断で、ここに再び「冬の日」を掲載することになつた。一言責任を明かにする次第である。/十二月三日 「詩・現実」編輯部》

「冬の日」は梶井らしい繊細さと芯の強さを備えた作品ではあるがやや描写に頼りすぎているかなとも思う。

《冬至に近づいてゆく十一月の脆い陽ざしは、然し、彼が床を出て一時間とは経たない窓の外で、どの日もどの日も消えかかつてゆくのであつた。翳つてしまつた低地には、彼の棲んでゐる家の投影さへ没してしまつてゐる。それを見ると堯の心には墨汁のやうな悔恨やいらだたしさが拡がつてゆくのだつた。日向は僅かに低地を距てた、灰色の洋風の木造屋に駐つてゐて、その時刻、それはなにか悲しげに、遠い地平へ落ちてゆく入日を眺めてゐるかのやうに見えた。
 冬陽は郵便受のなかへまで差しこむ。路上のどんな小さな石粒も一つ一つ影を持つてゐて、見てゐると、それがみな埃及のピラミツドのやうな巨大[コロツサール]な悲しみを浮べてゐるーー低地を距て洋館には、その時刻、並んだ蒼桐の幽霊のやうな影が写つてゐた。向日性を持つた、もやし[三字傍点]のやうに蒼白い堯の触手は、不知不識その灰色した木造家屋の方へ伸びて行つて、其處に滲み込んだ不思議な影の痕を撫でるのであつた。彼は毎日それが消えてしまふまでの時間を空虚な心で窓を展いてゐた。》

上述のこの時期に次々生み出された作品(『詩と詩論』には書けなかったが、ほぼ同時に『作品』のために「交尾」を完成させていた)とは単純には較べられないだろう。

ところで年譜には《『青空』掲載時に末尾に付されていた(未刊)の文字が、このとき取れた。》とあるが本書の末尾にはどうしたわけか(未刊)と印刷されている。

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『詩・現実』第三冊 78頁


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『梶井基次郎全集』別巻 486頁




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by sumus2013 | 2015-12-16 22:16 | 古書日録 | Comments(0)
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