林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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文芸辞典

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『文藝辭典』(創元社、一九二七年九月一〇日九版、初版は一九二五年)。創元社が初めて出版した本。大谷晃一『ある出版人の肖像』(創元社、一九八八年)を参照して見ると次のようにあった(傍点は省略した)。

大谷晃一『ある出版人の肖像 矢部良策と創元社』

《大正の終わりのころ、文学では同人雑誌の黄金時代であった。大阪高校生が多く加わった「辻馬車」が、その中で光彩を放っていた。》《船場や島之内かいわいの、そんな大阪の知的なぼんぼんたちと、矢部良作は接触していた。そういう新時代の雰囲気の中で、良作は出版の旗揚げを企てている。》

ここで大谷は波屋書房の宇崎祥二にも触れて《宇崎はその雰囲気のままに文芸出版に深入りして挫折する。》と書いているが、正確に言えば、宇崎は文芸だけに深入りしていたわけではないし、挫折したわけでもない。雑誌同士のいざこざに巻き込まれ負傷したことがもとで、元来が病弱だったこともあって、若くして歿したのである。出版活動は多岐にわたり着実に成果を残していた。これは訂正しておきたい。

《六月十日、良作は『文芸辞典』をとうとう刊行した。
 外面描写、第八芸術、高踏派、感受性、正反合、耽美主義、ノーベール賞金、ダダイズム、未来派、モノドラマ、裸体美術、……
 こういう新しい用語を解説している。文学だけに限らない。美術、演劇、音楽など芸術すべてに及ぶ。巻末には世界の芸術家略伝の九十ページを添えた。崎山猷逸やその仲間も執筆を分担したが、編纂者は創元社編輯部となっている。ここにはじめて創元社の社名があらわれた。
 創も元も、物事のはじめを意味する。壮大な名である。創はまた創造するに通じる。
 「本の卸しはこっちからあっちへ動かすだけで、その利を稼ぐのやが、僕は本を造り出したいんや」
 日ごろ、良作は口にしている。
 「創世のことか」
 その新社名を聞かされたとき、外次郎はつぶやいた。『旧約聖書』の開巻第一章はこう書き出す。
 「はじめに神は天と地とを創造された」
 熱烈なクリスチャンの彼は悪い気持ちがしなかった。キリスト精神によって良書を、と良作は打ち出す。
 「まア、ばかなことをする。金がかかるのに」
 外次郎は人にこぼしながら、それでも金を出している。
  矢部良策
 この本の奥付で、彼は良作の字を改めてこう名乗った。作という字は田舎じみて野暮ったく思っていた。このとき、彼は新生を策した。数え三十三歳。

父矢部外次郎は書籍取次会社福音社を経営しており、新社屋を建てたばかりだった。

《この『文芸辞典』はまあまあ売れた。五日のうちの六月十五日に再版を出す。二十六日にはじめて朝日新聞の朝刊一面下段に広告した。いい値段なので案じていたが、良策はこれで自信を得た。
 「この精緻なる文芸辞典の現はれたことは、文学界の至大な慶びである……」
 と、読売新聞が紹介する。当時の読売は東京だけの新聞である。それは、東京でも通用することを意味する。
 「どうだ、あの大阪物やないだろう」
 良策は胸を張る思いである。》

再版の日付については疑問もある。本書の奥付では四版まで五日毎に版が重なっている、そんなことあるのだろうか? また読売の賞讃も鵜呑みにしていいのかどうか慎重に考えなければいけない。とは言え、一年少々でこれくらい版を重ねれたとすれば「まあまあ売れた」というにふさわしいかなとは思う。

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by sumus2013 | 2015-09-21 22:07 | 古書日録 | Comments(0)
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