林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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天野さんの傘

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山田稔『天野さんの傘』(編集工房ノア、二〇一五年七月一八日)が届く。山田さんのご指名で小生が装幀を担当させてもらった。この著書について山田さんには特別な思いがあったようで、このデザインに落着くまでにはラフのやりとりが何回もあり、直接お会いしていろいろとご意見をうかがった。これまであまり著者と討議して装幀を練り上げるという手順をとってこなかったので、なかなかに新鮮な経験だった。

この図案はいちばん最後に出したもののひとつ。タイトルに傘という言葉があるにもかかわらず傘のイラストを配置した。屋上に屋を重ねるヤボな案。しかしストレートに視覚に訴えてくるのも事実。最終的には著者が決定した。そしてさらにレイアウトも何度か変更し、上のように落着いた。

これまでに発表された五篇に未発表作を加えたエッセイ十一篇を収める。

「生島遼一のスティル」講談社文芸文庫解説
「長谷川さんの葉書」『ぽかん』4号
「ある文学事典の話」『海鳴り』25号
「一本一合」『VIKING』702号
「ある〈アンダスン馬鹿〉のこと」『海鳴り』26号
「富士正晴という生き方」
「伊吹さん」
「天野さんの傘」
「古希の気分」
「裸の少年」
「初心忘るべからず」


「富士正晴という生き方」は富士記念館で行われた講演のレジュメを書き直したものだろうが、じつに締まった文体で読ませる。正直、講演ではやや広がり過ぎたように思える内容がここまで凝縮されて完成度を増すものかと舌を巻いた。

富士さんについて、いま思うこと

表題作「天野さんの傘」は天野忠の死後、香典返しにこうもり傘をもらった話である。

《この傘は、天野忠さんが亡くなったときの香典返しの品であった。
 香典返しにこうもり傘というのは変っている。聞いたことがない。奇抜というか独創的というか、いずれにせよ思いついたのは遺族のだれかだろうが、天野さんらしくないこともないなと、一方でいくぶん納得したものだった。
 傘は一見、真黒のようだが、明るいところでよく見ると黒にちかい濃い紫色である。布地は厚く丈夫そうで、かすかなつやをおびている。がっしりした茶色の柄はニスを塗ったように光っているが、これは薄い透明なビニールの膜に覆われているからである。その柄が、ふつうの傘よりも数センチ長い。そのせいで、傘全体がずいぶん大きく見える。重厚な感じである。折りたたみ傘に慣れた腕には当初、ずっしりと重く感じられた。その後もなかなか慣れることができない。というのは折りたたみ傘では間に合いそうにない本降りのとき以外には、用いないようにしているからである。外に持ち出すと盗られはしまいかという心配もあった。じつを言うと、もったいない気がして、最初の何年間かは実用品でなく記念の品として、傘立てではあく書斎の一隅に飾ってあったのである。もらってからすでに二十年ほどもたっているのに、いまも新品のように見えるのはそのためだ。》

実は最初、このあたりの鮮やかな描写から、表紙・見返し・別丁扉までをすべて黒い紙にして、本そのものをこうもり傘に見立てようと思いついた。ところが、そのようにプレゼンしてみると、なんと、山田さん、黒がお嫌いなのである。今改めてこのくだりを読んで思う、こうもり傘を使わなかった理由のひとつにその色もあったのかなと。

それはさておき、この後、山田さんは編集工房ノア氏にこうもり傘の香典返しのことを話して、こうもり傘をもらったのが自分だけであることを知る。そしてその理由を明らかにしようとする……。珠玉のエッセイというのはこういう作品のことであろう。

京都市内のホテルのロビーで山田さん、ノアさんと打ち合わせをした。ちょうど梅雨に入った頃で、小雨が降ったり止んだりという空模様だった。ロビーで時間ぴったりに姿を現した山田さん、「今日、天野さんの傘を持ってこようかなと思ったけど……折りたたみ傘にしといたよ、ふふふ」と。天野さんの傘、見てみたかったな。

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by sumus2013 | 2015-07-15 20:42 | 装幀=林哲夫 | Comments(2)
Commented by こがね丸 at 2015-07-21 19:56 x
三月書房にて『天野さんの傘』を求めました。「山田調」といういいかたは失礼かもしれませんが、待望の新刊を手にして、これこれ、と言う感じでうれしくなりました。アンダスンも早速注文。本の世界を広げて下って感謝です。
Commented by sumus2013 at 2015-07-21 20:38
まさに山田調なんです! 感謝。
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