林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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日蓮

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武者小路実篤『日蓮』(改造社、一九二九年六月三日)。装幀は中川一政。木版摺り。中川一政の装幀本については詳細に調べた本があったと思うが、今は手許にないので『季刊銀花』四十五号(文化出版局、一九八一年三月三〇日)の「中川一政の装釘」を参照してみると、こう書いてあった。

《武者小路実篤の本の装釘は、大正十四年発行の『泉と鐘』以後単行本だけで十一冊ある。これに先立ち、精緻で美しい『武者小路実篤全集』全十二巻がある。詩集『人生の特急車の上で一人の老人』は最後の装幀で、人生観照の詩に、人生解説の装画が描かれている。》(山田幸男)

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『銀花』には中川一政自身のエッセイ「装釘について」も収録されているのでいくつか文章を拾ってみよう。

《私は先ずゲラ刷りで来る文章を見る。これは作者がどういう人であるかを見る為と作品の雰囲気を知る為で、作者を知っている場合は、作品の見当もつきやすい。
 それから作品の時代背景を考える。
 装釘の注文を受けた咄嗟にイメージが浮かべば仕事は順調にゆくものだ。イメージが浮かばないときは苦労する。そして本文がもう刷上るからと云われて不本意な仕事になることがある。

これはまったく同感。最初に浮かんだイメージで決まれば満足できる本になる。イメージが浮かばないと苦労するのも間違いない。「文章を見る」と言って「読む」とは言わない。これも案外重要なことで、読み込んでしまうとかえってその細部が邪魔になることもある。個人的には内容よりもタイトルとの関係性が重要かとも思う。いいイメージでプレゼンして編集者や著者に拒否されたときも困る。かなり困る。

《その頃改造社から幸田露伴が『龍姿蛇姿』という随筆集を出した時装釘を依頼された。文中に仇十洲のことがあるからというのであった。
 仇十洲と云っても私にはわからなかった。何もそれをかかなくても中国風な装釘にすればよいのだろうと思って描いたが、露伴翁のイメージと違うということで没書になった。
 没書になったということは後にも先にも珍しいことである。
 後年仇十洲というのは明中期の美人画家仇英のことであるとわかったが、昔を思えば何も知らなかったという外はない。

これはゲラも見ていないということになるのか。編集者にも責任の一端はあるだろう。

《これらの装釘料は大概三十円位で、当時三十円あれば一寸した洋服が出来たと覚えている。

三十円は羨ましい金額である。『値段の風俗史』(朝日文庫、一九八七年)にも大正十年の背広は三十円となっている。

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この『日蓮』がまた人を食ったような作品。漫画みたい。

熊王。大へんです。大へんです。
日蓮。なんだ。
熊王。み、みん、皆がお師匠様を焼き殺すと云つてやつて来ます。こゝにゐらつしては焼き殺されます。
日蓮。さうか。よく知らせてくれた。それなら日昭逃げるとしやう。
熊王。早く、早く。
日蓮。あはてまい、あはてまい。前から覚悟してゐた。日昭おはちをもつてこい。私はお経を持つて逃げるからね、腹が減つては戦は出来ないからな。
日昭。はい。
熊王。お師匠さん、あなたは呑気ですね。もうすぐ来ます。
日蓮。よし、それぢや、あはてゝ逃げることにしやう。日昭出来るだけ早くついてかけて来い。
(二人かけ出す)
熊王。私もまけてはいませんよ。(何か手あたりに持つてあとをついてゆく)
(外から大勢がおしよせる声が聞こえる)

……とまあこんな調子。この後、処刑が落雷によって中止となり、佐渡へ流されるまでが描かれる。


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by sumus2013 | 2015-06-11 21:32 | 古書日録 | Comments(0)
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