林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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Bibliophil ふたたび

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中村書店の古書目録『Bibliophil』のXIVとXVそして北園克衛作のしおりを頂戴した。目録の発行年は不明。一九六〇年代後半だろうと思う。以前も紹介したが、改めて眺めてみると、このちょっとひねった横文字のレタリングもあるいは北園克衛のデザインなのかもしれない。


中村書店のしおり

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旧蔵者の生々しいチェック跡が詩集への情熱を感じさせる。XIVでは『月に吠える』カバー付が68000円と単品では最も高額。他に中也の『在りし日の歌』が8000円などなど。小説では独歩の『武蔵野』26000円が最高。例えばイナガキタルホ『天体嗜好症』は1800円。コーヒー一杯百円の時代だから推して知るべし……どころかコーヒーよりずっと高騰している。

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こちらはXV号。朱と黒に緑色も加わって賑やかで可愛い感じ。

もう一冊、これらに加えて中村書店主中村三千夫が寄稿している『新潮』第五十九巻第八号(一九六二年八月一日)も同梱されていた。さっそく読んでみる。

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題は「古本屋から見た文学」。新刊の価値観と古本の価値観がまったく違うということをまず述べておいてこう切り出す。

《早死にする子供が多いのは痛ましい限りであるが、逆に出版当初、売行き不振で生みの親を悩ませた川端康成「伊豆の踊子」初版などは育ての親に渡つてから、その真価を発揮した。現在古本市場でまず二千円はくだるまい。》

昭和二年金星堂版『伊豆の踊子』は目下十五万から二十万円くらいはしているようだから、この二千円はまだまだ低い評価だと言えよう。

《詩人の北園克衛さんが「自分たちが苦労して費用をかけて造つた本を中村書店ごとき古本屋が途方もない高い値をつけて売りさばいている」という趣旨のことをお書きになり、有難いお叱りをいただいた記憶があるが、育ての親の苦労も理解していただきたいものである。ひとりの子供を客の手許に渡すまで、時には四五年も懐にあたためている場合もあつて、私たちの商いは決して派手ではないが、一冊の本が高値で売れた時、私たちはその利益よりも、自分の付値にたいして受けた正当な評価にひそかな喜びと誇りを感じている。》

続いて古書売買の仕組み、古書の評価の基準に触れて、小説より少部数の詩集が高くなる例を上げている。『野村英夫詩集』『伊東静雄全集』そして

《総対[ママ]的に見て詩集でAに属するものは西脇順三郎、金子光晴両氏のものであろう。昭和八年に椎ノ木社から定価一円七十銭で出た西脇さんの「アムバルワリア」初版は現在五千円位である。
 西脇さんは、名もわからぬ野草などを大事そうにかかえて時々店にもお見えになり、棚に並んだ本にはほとんど目もくれず、「きみ、蛍光灯の明りはやめたまえ。これはオバケの出る色だ」などと云つては帰られる。》

金子光晴のものでは大正八年に金子保和で出した処女詩集『赤土の家』が非常な高値を呼んでいるのだとか。目下一冊「日本の古本屋」に出ているのが30万円。

《今の読者たちは本を愛さない。(これは本が他の諸物価に比して安く手軽に手にはいるためだろうか。)しかし本は無限の価値を持つ。週刊誌などがいくら栄えてもこれは関係のないことである。こうして薄暗い片隅に毎日坐りながら、貴重な文化財を守つていくことは古本屋冥利につきると言えよう。》

本好きの歎きはいつの時代も同じような調子を帯びるようである。週刊誌を電子書籍に代えて見ればそのまま現在に当てはまるだろう。その分、今では古い週刊誌も高くなっているのだけれど……

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by sumus2013 | 2015-06-10 21:11 | 古書日録 | Comments(0)
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