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岡本 わが町同じく口絵より橋本桂園「丘本春装」(一八八八)。桂園は堺の人。岡田半江に学び山水花鳥をよくした。 ……とそのくらいの岡本体験だったわけだが、本書は歴史、地誌、文化史の面から多くの識者が筆を執り、また古くからの住人の方々が思い出を語っておられる。きわめて興味深く岡本というものを多角的に知ることが出来る本だ。梅林、二楽荘、櫻守、大水害、だんじり…などが繰り返し語られるが、なかでも谷崎潤一郎が八年ほど住んだということが岡本知識人にとっては一種の勲章だということが分る。そしてまたその旧谷崎邸の保存運動が実らなかったこと、これがちょっとしたトラウマになっているらしいことも。 そういう意味では編者の中島氏が少年時代に旧谷崎邸でかくれんぼをしたことから「陰翳礼賛」の著者が明るい住居を好んだという矛盾するようなしないような説を紹介しておられるのがひとしお面白く感じられた。また「蓼食ふ虫」に挿絵を描く小出楢重の元(芦屋)へ出来上がった原稿を運ぶ人がいたというのも、今からでは考えられない話だ。小出は原稿を読んでも、内容に沿った挿絵はつけなかった。小説から受けた印象を絵にしたのだという。 もうひとつ谷崎の思い出として藤岡敏一「岡本に暮らして」のなかでこう語られている。 《谷崎潤一郎は岡本在住時、邸宅から以前岡本駅前にあった郵便局に通っていたのが目撃されています。当時は電話がなく中西商店をよく利用していたそうです。》 郵便局に通ったくらい当たり前だろう。しかしそれが伝説になる。文豪とはそういうものか。たしかに岡本の個人史である。
by sumus2013
| 2015-04-05 20:47
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