林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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深淵の諸相

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ヴァレンチノ司祭記念日にチョコレートを頂戴した。古書会館へ出かけた日以来、半月ぶりに市内のある古書店をのぞいて何冊か帳場へ持参したところ、おつりといっしょに「はい、これ、気持ちだけやけどね」とおばさん(先代の奥方、当代の母上)がチョコを呉れた。毎年お客さん全員に渡しているそうだ。これまでもらった記憶がないので二月十四日にこの店に立ち寄ったのは初めてだったのだろう。感激した。もちろん、これ以外にも何人かのご婦人方よりチョコレートの到来があったことは多少自慢げ気に書きつけておく。

上の写真でチョコが二個乗っている本、阿部六郎『深淵の諸相』(芝書店、一九三六年一〇月二四日)の裸本。函付きだとかなりの値段。気に入ったのは前見返しに木版摺り蔵書票「古松蔵書」貼付、後ろ見返しに「EX LIBRIS/TOKYO/SHIBA/SHOTEN」というレッテルが貼付してあるところ。

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「古松」が誰だかこれだけでは何とも分りかねる。シェストフ、独文系の論文集というつながりだけでドイツ語教育者として名高かった古松貞一かもしれないなどと妄想してみる。

「あとがき」の謝辞が凄い。

《この貧しい最初の著作に當つて、これらの文章を誘発して頂いた諸方の編輯者、特に谷川徹三氏、小林秀雄氏、小野松二氏等の厚意 河上徹太郎氏、吉田一穂氏、中原中也氏等の友情と啓発、並びに、芝隆一氏の不断の情誼に厚く感謝の意を表する。》

小野松二の名前を見つけて嬉しかった。小野が編輯していた雑誌『作品』に発表した論考が三篇収められているのから当然ではあるが。また「中原中也氏等の友情と啓発」にはちょっと驚いた。この年阿部は三十二歳。中原中也は二十九歳。仲がよかったのか。中也が急逝するのは本書発行日のまるまる一年後、昭和十二年十月二十二日である。






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by sumus2013 | 2015-02-14 21:12 | 古書日録 | Comments(0)
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