林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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お雪の一生

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『家庭少女小説お雪の一生』(綱島書店、一九二一年一〇月五日)。開巻第一ページ目には《高山笹波》と明記されている。奥付では《編輯者 さ々ふね》とあり表紙の右上にも《さゝふね編著[稿?]画》とあるので、笹波が誤植か、別人ということも考えられなくもないけれど、さあどうなんでしょう、というところ。

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本文挿絵。時代は日露戦争前夜。ストーリーは上野動物園の前の茶店にお雪という美人の娘が働いているのに目をつけた看護兵二人が冷やかしにやってくるところから始まる。上の図はその二人。

その茶店は谷中の八百屋のおかみが経営している。お雪は八百屋の主人の妹。働き者の夫婦には赤子ができたばかりで幸せに暮らしていたのだが、まず母親が急死。そして火事になってべっぴんの妹が顔に火傷。乳飲み子をかかえた夫は困り果てる……という大転回。

八百屋の主人もやはり元は看護兵だった。あるとき上司だった軍医に出会う。今は開業している。軍医は赤子に乳を与えて、当座の金を渡し、妹の火傷も治療してしまう。めでたしめでたし……のはずが

《お雪は軍医の骨折によつて、火傷は跡形もなく癒(なを)つたが、其年の暮には何時の間にか此軍医殿の妾になつて居た。蓋し軍医は以前からお雪の美人である事を知つて居たのである。》

チャンチャン。

描写のなかでおやっと思った二三のくだりを引いてみる。まず優しい夫。

《横町の瀧さんとは縁日の大道へ古道具の露店を出す男で、夜を更かすにも拘らず女房より先に起出で飯を炊き茶を沸し、其から女房の手洗(てうづ)の水までを汲む男である。》

火事の原因も興味深い。

《何でも夜の十一時過ぎだツたの、徳さんの隣の宅(うち)で洋燈(らんぷ)を引繰覆(ひつくりかへ)したのですの。早く近所の人をお呼びなされば可いのに貴郎、内密(ないしよ)で以て灰を打掛(ぶつか)けたり水を灌(か)けたりしたんでしやう。何しろ座敷一面に石油が流れて夫(それ)に火が付いたのですから、何(ど)うして消えるもんですか、近所の人がほら火事だ、と云つた時には最(も)う其宅は焼けて了(しま)つてゝよ。》

女房に死なれた夫が赤子を抱えて吐くせりふ。

《「はい、女房に死なれたものですから、実にお恥しい次第ですが、牛乳を買ふ事も出来ませんで乳汁(ちゝ)を貰ひに参りましたのでございます。」》

牛乳で乳児を育てるのはもう少し大きくなってからかとも思うが。ついでに乳をくれた人が《真個(ほんと)に可愛(かあい)い赤さんです事ねえ》としゃべっていることも書き留めておこう。「赤さん」と言った。

綱島書店は明治四十年頃から昭和二十年代まで出版物がある。田山花袋の小説なども出版しているが、実用書、児童書などへと転換して五十年近く生き延びたようだ。









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by sumus2013 | 2015-02-05 22:09 | 古書日録 | Comments(0)
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