林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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越谷小説集

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野口冨士男『越谷小説集』(越谷市立図書館野口冨士男文庫運営委員会、二〇一四年一一月二二日)を昨年末に頂戴した。いつも珍品を送ってくださる某氏からである。まだ出たばかりなのにブックオフの均一に並んでいたのだとか。

野口冨士男は一時期、凝って読んでいたのでした。カバーの写真、奥付に撮影者の名前は出ているのですが具体的な日時や場所の説明はないようです。左は元荒川か大落古利根川か、(水だと思います)かなり場所が限定できるのではとも思って地図をみてみましたがわかりませんでした。

越谷には妻直子の実家があり、戦争のため東京に住めなくなった昭和二十年から二十二年まで野口一家はここで暮らした。越谷を舞台にした小説が七篇と短いエッセイが一篇収められている。

《野口さんに"越谷小説集"というまとめの概念はなかったと思う。しかし野口さんには越谷で得た作品とよびたい集りがあるから、それを編んでみたいという願いが野口冨士男文庫運営委員会の皆の中にあった。越谷市に自分の文学の全資料を寄贈する考えは野口さんの中に最晩年、越谷出身の妻直子へのせめてもの贈物としても考えられており、越谷市との間で契約が結ばれて野口冨士男文庫ができた。

と「解説」で坂上弘は書いている。

小生も越谷には多少のゆかりがある。祖母の弟ともうひとり別の兄弟の息子が越谷におり、武蔵野美術大学に入ったばかりの頃には、大学のある小平から西国分寺へ出てそこから旅客線として開通(一九七三)して間もない武蔵野線で越谷(新越谷)まで毎月のように通っていた。野口の描く越谷は自然に恵まれた人間関係の濃密な地方都市であるが、小生の知っている越谷はまさに新興住宅地だった。大叔父は東武鉄道に勤めており、若い方の「越谷のおじさん」は東京の大手企業に勤めていた。若おじさんには子供がなく、とくに可愛がってくれたが、残念なことにそれから間もなく若くして(おそらく五十代)亡くなった。山口瞳のサラリーマン小説に出て来そうな風貌であり話し振りだったのが田舎出の小生にはたいへん面白く感じられてそのおじさんが好きだった。

野口の越谷小説のなかでは、犬を飼うという描写から始まる、妻の父親をモデルとした「死んだ川」がいいと思った。昭和三十二年に『群像』に発表された作品。主人公は少年時代から南画家の師匠宅に住み込んで自らも南画家となるが、南画が下火になったこともあって大家族を養うため突然歯科医師に転身してしまう。しかし当然ながら終生絵筆に執着をもっていた。その姿を子供の目から描いている。やや効果を狙ったあざとさがなきにしもあらずながら、小説の結構ができている。

野口については『わが荷風』や『私のなかの東京』でしか知らなかった。小説は初めて読んだような気がする(講談社文芸文庫に二冊、また小説全集も出ているのだが)。正直、エッセイの方が数段いい。例えば本書に収められた別の小説「薄ひざし」という作品では《ある日杉野は散歩に出て、町のあちらこちらにある看板以外の貼札、貼紙、引札などの類を片っぱしから書き取れるだけ写し取ってきた。》とあって、その写し取った文面がズラズラズラと引用されている。二頁半にわたって。実験小説の手法かと思わせられるほどだ。何の意味もないそんなモデルノロジオ的な行為にふけるところに敗戦後の虚脱が表現されているというココロのようである。新味はあるが、小説作品として考えた場合、不消化を感じる。随筆として生かす方法があったのかもしれないし、そういう即物的なリアリズムが文学研究の方に適っていたとも思える。

そういうことが分っただけでも野口の小説をゆっくり読んだ収穫である。年表と著作目録が備えられているのも参考になった。


***

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キトラ文庫の古書目録『莢』8号(二〇一五年一月五日)が届く。今回はエッセイが五篇掲載されている。細見和之、高啓、森本恵一朗、中尾務、加納成治。キトラさん調子が戻って来た(『coto』が終刊してから少しさびしかったので)。加納さんはロードスさんのことを書いている。先日訪ねたとき、なかなか思うように書けないと言っていた。しかし、いつもの加納さんらしくない引き締まった文体でグイグイ引き込まれる追悼文になっている。それだけロードスさんを喪った哀しみが深かったのだとあらためて感じさせられた。

目録の方では詩集コーナーが凄いです。あれもこれも注文したい…が、いやいや待てよ、とブレーキを踏むことしきり。

キトラ文庫


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by sumus2013 | 2015-01-08 21:03 | 古書日録 | Comments(2)
Commented by akaru at 2015-01-09 09:26 x
加納さん、いい追悼文ですね。
Commented by sumus2013 at 2015-01-09 11:57
哀しみを越えた怒りみたいなものを感じました。
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