林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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かりそめの黄眠詩塾小史

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「かりそめの黄眠詩塾小史1」からめぼしい部分を抜書きしておく。

黄眠詩塾と命名される詩塾の開設は、その掟書が作成された昭和三年二月二十二日ということになろう。ちなみに書けば二月二十二日は日夏耿之介の誕生日であって、その著作の発行日に合せて印刷することも多く、黄眠会もこの日を選んで開催されたことが多い。

関川もまた北海道から日夏耿之介に憧れて早稲田の高等学院へ入って樋口教授(日夏)のゼミに加わった。『詩作ノート』の原崎俊一が一九〇〇年生まれなので関川は八歳年下になる。

《樋口教授の大学における講義は、しかし病気勝ちで休講が多く、卒論の指導に当っては、太田七郎をその代講に選ぶ方法によった。彼は人怖じする私に逆療法を用いて、事あるごとに私を連れて未知の会合に引っ張り出し、未だ敬遠する気持ちの強い黄眠草堂にも、押しかけるように口実を設けて訪問した。

関川は日夏の転居を二度手伝い(馬橋から阿佐ヶ谷六丁目、そして阿佐ヶ谷から天祖神社際)、その蔵書をつぶさに知る機会を得たという。

《太田七郎と玄関から奥の間まで足の踏み場もない蔵書を整理した。先生珍蔵の古版本また古写本について、太田七郎の生きた解説を受けるという、願ってもない幸運を感謝しつつ》

ただ黄眠詩塾には加わらなかった。なぜなら授業料が入学金のほか月二十円という高額で関川には高嶺の花だったという。詩塾とは別に面会日があり、そこには日夏を慕う多くの人々が訪れた。平井功もそのなかの最年少の一人だった。そこから「黄眠会」が発足した。

関川は《足で探す古本発掘の特殊能力》を認められ、ことあるごとに日夏の講演会や展覧会に同行した。佐藤春夫編集で日夏と中川一政が協力した『古東多卍』創刊の会合が本郷「鉢の木」で開かれたときにも出席した。それが上の写真である。雅博那(やぽんな)書房」の五十沢二郎や平井呈一の顔が見えるのもたいへん興味深い。

***

去る十二月十四日、松尾尊兊(たかよし)先生が亡くなられた。『sumus』そして『spin』も読んで下さっていた。とくに淀野隆三日記には興味を持っていただけたようで毎号感想の手紙を頂戴したし、重要な関連資料を教えてくださった。二、三度だけだが古本まつりで立ち話をさせていただいたこともある。もう何年も前になるが、たしか下鴨の納涼古本まつりのとき、三好達治の色紙を五百円だかで発見され、非常にうれしそうなご様子だったのが印象に残る。「詩集と言葉の使い方が少し違うようなんです!」とおっしゃっていた。先生の大正デモクラシー研究は不朽かも知れないが、個人的には本物の古本者がまた一人去ったことを深く嘆きたい。ご冥福をお祈りする。

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by sumus2013 | 2014-12-30 21:15 | 古書日録 | Comments(4)
Commented by みなみ at 2014-12-31 08:30 x
先週、阪神百貨店の催場でお見かけしましたが、熱心に古書に見入っておられたので、つい声をかけそびれました。
いま読んでいる荒俣宏さんの『江戸の幽明』に、著者と平井呈一の出会いが登場するので、この集合写真、まじまじとながめました。

とても寒い年明けになるようですが、心おだやかな新年をおむかえください。
Commented by monsieurk at 2014-12-31 16:32
プレヴェールのコラージュへのコメント有難うございます。ぜひ見ていただきたいと思います。松尾先生の葬儀にはフランスから帰国直後で参れませんでした。朝日の永井先生の追悼記事は意を尽くされており感銘を受けました。「ユリイカ」1月号からマラルメの詩の新訳を連載し始めました。お送りいたします。MK、佳い年をお迎えください。
Commented by sumus2013 at 2014-12-31 20:09
みなみさま そうでしたか! また気軽に声かけてください。
Commented by sumus2013 at 2014-12-31 20:15
monsieurK様 プレヴェールのコラージュ、見事です。運命ですね。いずれ機会がありましたら是非拝見させていただきたく。松尾先生、古本まつりでお見かけしなくなってからずっと気にかかっておりました。本当に残念です。わずかでもお付き合いさせていただけたことを光栄に思います。
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