林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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井伏鱒二対談集

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検印に引続いてもうひとつ印章の話を。ごく最近、いつも珍本を見つけてくださる某氏より『井伏鱒二対談集』(新潮社、一九九三年四月二十日、装画=井伏鱒二)を頂戴した。深謝です。

《同封の井伏対談集、またまた荻窪ささま書店店頭105円棚から入手しました。ご覧のとおりの状態ですが、「鱒二」の角印が押してあります。井伏の印(落款)の入った著作は、タテ長楕円の印のものは「日本の古本屋」などで写真を目にしますし、現物も手にしたことがあったので 角? と思いましたし、この対談集は井伏没後の刊行なのであるいは偽印とも思いましたが、本郷の某書店の出品している『さざなみ軍記』署名落款本のものとどうやら同じもののようです。
 根拠・確証のない想像ですが、没後刊行のこの本に、近親の方などが捺されて知己に渡されたのではと思います。》

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見返しに捺印されている「鱒二」印。そして某氏が同封してくれた古書目録からの印影コピーがこちら。

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全く同じものかどうか、このコピーだけでは判然しない。捺印のときにズレて(あるいは二度捺し?)全体に線描が太くなっているため細部の比較が難しい。それでも文字の構成からしてまずは同一印章と見ていいだろう。ネット上にはたしかに楕円の朱文「鱒二」印がいくつか出ているし、小さい画像ながら方印も見つかった(下)。

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某氏は歿後刊行と書いておられるが、井伏が歿したのは平成五年七月十日のようなので、本書刊行時にはまだ存命だった。よってこの印は井伏自身が捺印した……とは思えないが、誰か代わりの者が献呈用として捺したのではないだろうか。某氏の推測しておられる通りだろう。だからきれいにきっちりと捺印されている。

対談もなかなか味がある。出版界では対談本は売れないというのが定説だそうだ。たしかに話がどう進むかわからないし、人間、パロール(しゃべり)ではエクリチュール(文章)よりも事実関係などがかなりいいかげんになるものだ(だから面白いという側面もあるが)。まとめる編集者の力量にも左右される。本書では永井龍男(六歳年少)、尾崎一雄(一歳年少)といった人達との回顧談をひときわ興味深く読んだ。永井との対談で志賀直哉を崇拝していたというくだりにこういうことが書いてある。

《永井 麻みたいな感じのザラザラした固い表紙の『留女』というのを義兄に読まされて、実に感動して……。
井伏 暗誦する人もあったな。
永井 それにね、総合雑誌、文芸雑誌の新年号というものね、僕ら実に眩しいような気がして目次を開いたものですよね。とても買えないのだな。「中央公論」や「改造」は一円五十銭とか、それくらいしたな。「新潮」が八十銭ぐらいかな。新年特大号というので、目次を開くと、志賀直哉、佐藤春夫、宇野浩二、菊池寛がずっと並んで、志賀さんが書いてると胸が躍ったものだけれどもね。十二月二十日過ぎでしたよ、新年号が書店に出るのは。神田の神保町のそばに住んでいたから、とくに本屋は三省堂も東京堂もすぐですからね。十五日過ぎると毎日本屋に行ってみたものだな、まだ出ないか、まだ出ないかと。ああいう、新年号に対する期待というものは、いまの若い人にはないんだろうな。
井伏 インキの匂いを嗅いだな、印刷のね。
永井 その目次のなかに、新人が一人か二人取り上げられていてね。
井伏 「新潮」は文壇の登竜門と言われていたな。
永井 ほんとにインキの匂いを嗅ぎましたよ。
井伏 新鮮でね。いまインキの匂いしないのじゃない。インキがよくなったのかな。洋服でも子供のとき先生が着ているとラシャの匂いがしたが、いまはラシャの匂いはしないね。鈍感になったのかな。》

ああ、そういえば、永井青年のように高尚な雑誌を待ち望んだ記憶はないものの、少年雑誌の新年号は待ち遠しかった。とくに付録が楽しみだったなあ……。




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by sumus2013 | 2014-12-10 21:05 | 古書日録 | Comments(2)
Commented by 某氏です。 at 2014-12-10 21:38 x
井伏の没年を間違えてしまったようです。失礼しました。
Commented by sumus2013 at 2014-12-11 19:58
いつも珍しい本を有り難うございます。来る年もどうぞ宜しくお願いします。
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