林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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工作舎物語

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臼田捷治『工作舎物語』(左右社、二〇一四年一二月一〇日)読了。これは面白かった。とくにエディトリアル・デザインの歴史に興味のある者にとっては必読の書となるだろう。工作舎は言うまでもなく松岡正剛が中心となって設立し、杉浦康平がその編集思想に共鳴、全面的に協力した。この二人の個性によっていまだ戦前モダニズムを引き摺っていた一九六〇年代までの雑誌界ひいては出版界のなかにひとつの巨大颱風を発生させた。ある意味で工作舎とは出版史における異常気象のようなものであろう。多くの人材を引き込み、そして吹き散らして行った。

工作舎には幾多の多彩な才能が参集した。そして松岡らの薫陶を受けて巣立った俊才が相次いで世に出ていった。
 戸田ツトム、芦澤泰偉(あしざわたいい)、森本常美、海野(うんの)幸裕、中山銀士(ぎんお)、祖父江慎らデザイナーである。
 デザイナー以外に目を向ければ、版画家の西岡文彦、編集者の後藤繁雄、写真家の佐々木渉(わたる)・光兄弟、大西成明(なるあき)、映像作家の永田陽一、翻訳・通訳者の小幡和枝(こばたかずえ)、村田恵子、内田美恵らがいる。
 外部スタッフでは、市川英夫、中垣信夫、清原悦志(えつし)のすでに名のある実力派デザイナーにくわえ、若手では羽良多(はらた)平吉、松田行正らが協力した。さらに一時的にかかわった工藤強勝(つよかつ)、山口信博らを加えたい。アートディレクターの油谷勝海(ゆたにかつみ)もそうだ。
 このほかの「遊人」では、博物学者の荒俣宏、舞踊家の田中泯(みん)らが出入りしていた。写真家の大辻清司(きよじ)、森永純、内藤正敏、メディアアーティストの藤幡正樹、画家のタイガー立石、イラストレーターの唐仁原教久(とうじんばらのりひさ)らもそう。
 現代の出版界で重きをなす顔ぶれが、壮大な景色となって立ち上がってくる。家に帰ることなく舎人が働く工作舎はまさに不夜城であり、一時は二百人が出入りしていたという、例外的といっていいような熱気がこもる梁山泊だった。
 いまでは独自の地歩を築いた異才たち。当時はほとんどが若く無名だった彼ら彼女たちは、いったいどんな仕事と生活をしていたのか? 工作舎という稀有の水源が生み出した、デザインを中心とした水脈を探るべく、松岡正剛が指揮をとった時代に向けて舟を漕ぎ出そう。それは四十余年間デザイン編集をしてきた、私のセンチメンタルジャーニーになるかもしれないが……。》(「はじめに 例外的な熱気」)

臼田氏は異常気象ではなく水源だと形容しているが、もっと具体的に言えば、それは桑沢スクールなのかもしれない。東京藝大やバウハウスではなく桑沢デザイン研究所がそのもっとも大きな水源となったようである。それは本書を読んでいただければ自ずから理解されるだろう(なお松岡正剛は早稲田中退、杉浦康平は東京藝大建築科出身)。アヴァンギャルドはやはりエクセントリックな(中心から外れた)場所から現れる。

どちらにしてもその特異な現象をインタビューと関連記事の引用を用いて萌芽から丁寧に解き明かして行く過程は現代史の一断面としてもじつに興味深いし、もしデザインに手を染めているという人なら、祖父江氏のインタビューには驚きを禁じ得ない部分が何箇所もある。デスクトップ・パブリッシングが登場する以前のデザイナーたちはなんとも不可思議な曲芸的(いや、職人的)技術を磨いていたのだ。その証言がなんとも面白い。

個人的にひっかかったのは『現代美術小事典』(PARCO出版局、一九七四年)。かなり昔、この本を買って、ずっといつか売ろうと思いながら、なぜか売らずに今も本棚の片隅に置いている。パルコ出版から工作舎が請け負っていた小事典シリーズは工藤強勝、木村久美子ら制作にあたったが、この現代美術小事典』は桑沢を中退した山口信博が執筆にも携わって時間をかなりかけて完成させたという。使いやすいとか、記述内容がどうか、というのは措いておいて、細部まで楽しんで作っていたのがよく伝わってくる一冊だと思う。

現代美術小事典

もうひとつは『ソムニウム』、これまでも何度か取り上げて来た。

ソムニウム

《同じ工作舎人脈では、京都に戻った編集者後藤繁雄らが設立した「エディショシオン・アルシーヴ」の「ソムニウム叢書」と羽良多とのかかわりにも触れておきたい。幻想文学を対象とし、マルセル・ベアリュ著『水蜘蛛』に始まる同叢書の装丁は、羽良多の美質が十全に発揮された仕事のひとつである。》(第三章 羽良多平吉

水蜘蛛

さらに松田行正の項目にある《松田は工作舎グラフィズムの美質の正当な継承者なのである》という文章は田中美穂『苔とあるく』のカラーで刷られたジャケット裏のデザインを思い起こさせる。カバーの裏までダイアグラムを刷り込んだ講談社現代新書があるのだが、あの裏面作業は工作舎の十川治江らによって行われていたのだそうだ。まさに継承、である。

苔とあるく

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by sumus2013 | 2014-11-24 17:35 | おすすめ本棚 | Comments(0)
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