林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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観楓紀行8

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明治二十九年十一月二十日。晴天雲なし。中桐絢海は南岬(宿の主人で、同郷讃岐の人)とともに京都へ向かう。人力車で梅田駅へ。七時五十五分発京都行に乗車。《乗客頗ル夥多ニシテ南岬ハ京都ノ近クマテ立往生ヲナセリ》。伏見稲荷停車場で降りてまず稲荷神社を参拝。そこから北へ向かって東福寺の境内へ入った。

《東福寺ハ維新ノ際再三ノ火災ニ罹ルト雖ドモ通天橋ハ旧形依然タリ予ハ幼時曾テ一遊セシコトアリ今ヤ星移リ物変リ再ヒ楓紅ヲ茲ニ賞ス蓋シ今昔ノ感ナキ克ハサルナリ》

f0307792_21341715.jpg
『日本地理辞典』(郁文舎、明治三十九年)より


しかしここの紅葉はすでに色が褪せており観光客はまばらだった。小亭で酒と茶を喫する。出された菓子が不味かった。落葉が紛々と散り落ちて酒杯のなかに。南岬の俳句。

 散るをみし待わひ顔や膝の上

 首筋へ冷りと一葉楓か那

東福寺の北門を出て伏見人形店を見やりながら(当時は北門付近にも人形店があったようだ)、人力車を雇って往復の約束をし三尾へ向かう。京都御所から西北へ走る。御室仁和寺の爛燦たる紅葉を眺めて三尾の麓に到着したのが正午を少し回ったところ。まず高雄山へ向かう。観光客(游覧人)が多くて雑沓とも言うべき様相を呈している。神護寺から細い坂道を登り地蔵院へ。清滝川を眼下にする秀麗な景色に満足した。しかしその人出が多いのに閉口する《此地又露棚多架設シテ游覧人雑沓殆ント田舎ノ祭礼ノ如シ》。

路を槙尾の方へ取り紅葉を眺めながら渓流に沿って行く。西明寺の幽邃な風情に満足して山を下り栂尾へ。白雲橋のそばに断崖があり、その上にいくつかの茅亭、草舎が見える。風流な隠士かあるいは禅師が住んでいるのだろうかといぶかる。高山寺へ。明恵上人の遺墨などの宝物を見ることができた。堂上で茶菓をふるまわれた。夕陽が西山に沈んで行く光景に恍惚となる。

山を下って、夕食を摂ろうと思ったが、車夫が案内してくれたのは一膳飯屋だった。二人で苦笑いしつつ、残ったひょうたんの酒を飲み、車夫たちと食事をした。食後、妙心寺を斜めに突っ切って七条停車場へ。午後七時。二十分ほど待って大阪行きの汽車に乗り込んだ。

《乗客甚多カラス中ニ一少女アリ永観堂ノ楓ヲ携ヘ帰レリ車窓ヲ開ケハ東山ノ頂ニ新月ノ浮フヲ看ル夜景糢糊トシテ山川悠々タリ》

大阪の宿に戻ったのは午後十時頃だった。茶碗蒸を食べて寒さを破る。留守中に緒方正清が来ていた。明日は手術日なので見学に来てくれとのことだ。

(つづく)





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by sumus2013 | 2014-11-11 20:12 | うどん県あれこれ | Comments(0)
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