林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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誕生日の子どもたち

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トルーマン・カポーティ『誕生日の子どもたち』(文藝春秋、二〇〇二年五月一五日、装丁=坂川栄治+藤田知子)。

春頃、カポーティについて何か書いて欲しいという原稿依頼を受けた。そのときにはカポーティと聞いてすぐに思い出すのがアンリ・カルチェ=ブレッソンの撮ったポートレートだけという始末で『アラバマ物語』も『冷血』も読んでいないし、ただ『ティファニーで朝食を』は出だし三頁くらいは英語で読んでいたが、無知もはなはだしかった。ということで結局、依頼は断らざるを得なかった。

そのブレッソンの写真はこちら。ニューオリンズ、一九四七年。カポーティ二十三歳。『遠い声 遠い部屋』を出版し天才作家出現として騒がれたころだ。いい面構えをしている。この顔がずっと印象に残っていた。

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ところが、依頼を断った次の日か、あるいは数日以内だったと思うが、本書『誕生日の子どもたち』を百円均一の箱のなかで見つけたのだ。これはいい機会だと思って買わせてもらって、もう一軒回ったところ、そこでは『おじいさんの思い出』(文藝春秋、一九八八年)が二百円だった。あ、そうか、この本は持っていた。持っていただけではなく、たしか読んだ記憶がある。当時、これがカポーティだという意識はまったくなかったのだ。というような次第で『誕生日の子どもたち』を読み始めたら、これが面白い。どう面白いかは読んでのお楽しみ、訳者村上春樹の語り口が心地よいというのもひとつあるだろう。村上の解説にはこうある。

《そこに描かれたイノセンス=無垢さはある場合には純粋で強く美しく、同時にきわめて脆く傷つきやすく、またある場合には毒を含んで残酷である。誰もが多かれ少なかれ、人生の出だしの時期にそのような過程をくぐり抜けてくるわけだが、中には僅かではあるけれど、成人して歳を重ねてもその無垢なる世界をほとんど手つかずのまま抱え込んでいる人もいる。トルーマン・カポーティはまさにそういうタイプの人であり、作家であった。》

高校時代、村上春樹は本書に収められている「無頭の鷹」に出会った。

《その文章の比類のない美しさに打たれて、すぐにペーパーバックを買ってきて全文を読んだ。それからしばらくのあいだ熱病にかかったみたいにカポーティの文章を英語で読み漁ったことを記憶している。そういう意味では『無頭の鷹』は僕にとって特別な意味を持った作品であると言ってもいいだろう。ほぼ十年ぶりに読み返してみても、古いと感じるところはひとつもなかった。

絶賛である。たしかに、本書に選ばれている短篇のなかでは最も仕上がった「作品」になっている。とくに前半はよく書けている。街の描写が見事。ただし、後半、幻覚のようなシーンが連続して終焉へ向かうのはいただけない。映画的とも言えるかもしれないし、こういうのが好きな人にはいいかもしれないが、この終わらせ方ではせっかくの前半が台無しだ。ただ村上春樹がこの作品を偏愛するというのはよく分る。無頭の鷹』の両義性は村上春樹の創作に直結するだろう。

アメリカ南部の食べ物がいろいろと出てくるのが興味深い。「感謝祭の客」から驚くべき朝食。

《朝食はきっかり五時半に用意され、量は常に食べきれないくらいたっぷりあった。今でも僕は、あの未明の豪勢な料理のことを思うと、ノスタルジックな食欲を身のうちに感じることになる。ハム、フライド・チキン、フライド・ポークチョップ、なまずのフライ、リスのフライ(季節が限定される)、目玉焼き、グレイヴィー・ソースをかけたとうもろこしのグリッツ、ササゲ、煮汁を添えたコラード、それをはさんで食べるコーンブレッド、丸パン、パウンドケーキ、糖蜜つきパンケーキ、巣に入ったままの蜜蜂、自家製のジャムとゼリー、甘いミルク、バターミルク、チコリの香りのする地獄みたいに熱々のコーヒー。》

もちろんこれらは農場で働く十五人くらいの人達の朝食である、念のため。チコリー・コーヒーは南部の名物。「クリスマスの思い出」にも出てくる。

《クイーニーはコーヒーを入れた鉢にスプーンと一杯分のウィスキーを入れてもらう(クイーニーはチコリの匂いのする強いコーヒーが好きなのだ)。》

「感謝祭の客」には感謝祭のパーティのごちそうが並べたてられている描写がある。ホストは詰め物をした七面鳥を充分な数だけ用意する。来客がいろいろな料理を持って来るのだ。透き通ったオレンジのスライスとすりつぶしたココナッツを一緒にした果物のデザート、レーズン入りのスイートポテト、瓶詰めの色とりどりな野菜、冷たいバナナ・プディング……。

「クリスマスの思い出」のフルーツケーキもじつにうまそうだ。ピーカンを集めるところがいい。

《十一月のある朝がやってくる。すると僕の親友は高らかにこう告げる。「フルーツケーキの季節が来たよ! 私たちの荷車を持ってきておくれよ。私の帽子も捜しておくれ」と。》

《僕らはふたりで専用の荷車(実はおんぼろのうばぐるま)を引っ張って、庭に出て、ピーカンの果樹園まで行く。その荷車は僕のものだ。つまり、それは僕が生まれたときに買われたものだ。》

《三時間後に僕らは台所に戻って、荷車いっぱい集めたピーカンを剥いている。自然に風で落とされたものに限られているから、それだけの数を集めるのはけっこう大変だ。背中がずきずき痛む。葉っぱの下に隠されたり、霜のおりた草の陰に埋もれたピーカンの実を捜すのは簡単ではない。おおかたの実はとっくに枝から振るい落とされて、果樹園の持ち主の手で売り払われていた(要するに、僕らはそこの持ち主ではないのだ)。カチイイイン! 殻の割れる気持ちのいい音が、小ぶりの雷鳴のようにあたりに響きわたる。甘くて脂分を含んだ象牙色の果肉のまばゆい山が、乳白ガラスの鉢に盛り上げられていく。》

ピーカンはペカンとも。発音はさまざまのようだ。

The pecan (/pɪˈkɑːn/, /pɪˈkæn/, /ˈpiːkæn/, or /ˈpiːkɑːn/)




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by sumus2013 | 2014-08-25 20:45 | 古書日録 | Comments(2)
Commented by arz2bee at 2014-08-26 11:48 x
アラバマ物語では登場人物のモデルですね。村上春樹がカポーティの感性に惹かれるのは分かるような気がします。
Commented by sumus2013 at 2014-08-26 19:33
映画「アラバマ物語」はいい作品だと思いました。原作も読んでみましょう。カポーティのエキセントリックなものへの嗜好が村上春樹の感性とも交わるのでしょうね。
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