林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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大月健さんのことなど

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中尾務さんより『大和通信』第九八号(海坊主社、二〇一四年八月一五日)が届いた。そこに中尾さんが「リトルマガジン編集者 大月健、太田順三の死」と題した追悼文を寄稿しておられる。太田についてはやはり中尾さんの文章と資料提供によってこのブログでもその小説「キック・オフ」について少しばかり書かせてもらった。

キック・オフ
http://sumus2013.exblog.jp/22114666/

中尾さんによると、太田順三が誤飲性肺炎で歿したのが奇しくもこの記事の四日後、二十七日だったという。

《この林さんのブログ「キック・オフ」の日付は、五月二三日。このとき、太田順三はすでに集中治療室のなか。でも、ブログは紙媒体やないから、するすると入ってって、太田にとどいたんとちゃうかしら。

届いていればいいのだが、いや、逆に太田の小説がこれをきっかけに多くの未知の人々に届いて欲しいと思ったりもする。

『虚無思想研究』同人で個人誌『唯一者』を発行していた大月健さんについては五月末に扉野良人氏より訃音をもらっていた。五月二十六日付けの手紙である。

《ごぶさたしています。
先日、十七日に大月健さんが亡くなられました。今年に入って体調を崩され、四月にバプテスト病院に入院。程なく同院のホスピスに移られて、僕は三度程お見舞をしました。会いに行くと嬉しそうに迎えてくださり、草野球の部費を渡されて、それがいつものとおりの大月さんで泣き笑いしてしまう始末でした。最後は五月十三日、いま築添さんの作品集を制作しており、大月さんの奥さんがブローチと帯留めを持っていらっしゃるので、それを受けとりに伺いました。大月さんは終始寝息をたてて眠っていました。帰り際、少し眼を醒まし、「いよお」といつもの大月さんの合図、先日の草野球の試合に勝ったことを伝えるとベッドの枕横を手でたたいて喜ばれました。今頃は築添(ファースト)さんとキャッチボールをしてスピリッツ(チーム名)のメンバーが揃うのを待ってるのだろうと思います。大月さんは名ピッチャーでした。

大月さんとは扉野氏を通して知り合った。扉野氏はなぜか年かさの友人知人が多く、大月さんとも二十年は離れているはずだが、スピリッツのメンバーとしても父親のような人達と仲良く付き合っていた。最初の頃、扉野氏から小生もスピリッツに誘われたのだが、野球は小学生のとき以来やったことがなかったので参加することはなかったのだけれど、今思えば大月さんや築添さんたちとプレーしておけばよかったと残念に思わずにはいられない。名ピッチャーぶりを見てみたかった。小生、中学校のバレーボール部ではキャプテンだったので運動は苦手じゃないのだ。それにしてもスピリッツとは……いい名前だ。お酒好きなメンバーばかりだもの。

大月さんとは、だからそう頻繁に会ったわけではない。けれど、京都で個展をやるといつも雪駄ばきで見に来てくれた。扉野氏のお寺・徳正寺でいろいろな催しのとき(尺八や辻潤やその他いろいろな会)に築添さんや久保田さんたちとご一緒することが少なくなかった。年がら年中、裸足、そして雪駄。京大の農学部図書館に勤めておられるとは、一目まず想像できない風体なのである。しゃべり方も、岡山の出とうかがったように思うが、甘ったるいような塩辛いような不思議な妙味を感じさせる音調をもっていた。はっきり言って、一度会ったら決して忘れない日本昔話に出てきそうなキャラクターなのだ。ところが(人間見かけじゃないです)、辻潤や伊藤野枝を研究しておられるし、編集者として『唯一者』を出し『京大俳句』にも関わっておられた。

上は『唯一者』第七号(『唯一者』発行所、二〇〇一年七月一日)。いつも送って下さっていた。とくにこの号は佐々木靖章「カフェー・パウリスタからカフェー・ブラジレイロへ」という京大で行われた講演の記録が掲載されているので『喫茶店の時代』準備中だった小生にとっては有り難い内容だった。どなたかの連載を単行本にしたいのだが「装幀、やってもらえる、かな?」と頼まれていたことも思い出す。実現はしなかったけれど。

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『唯一者』七号に挟まれていた大月さんの手紙。中尾さんは上記の文中にこう書いておられる。

《そう、こちらが『CABIN』を出したおり、第一、第二号の版下作成は大月にやってもらったんだ。第三号の版下は教え子の女性にまかせることにして、作業の手順を伝授してもらおうと教え子を京都に連れて行くと、この女性、前をいく雪駄履きの大月が、踵に縦に二本アカギレを出しているのを目にして、「なんでしょう」とこちらにたずねるということもあった。
 不可思議、そうとしかいいようのない、判じものめいた特徴のある筆蹟だったが、あれにはだれかの影響があったのか。それとも、自身で案出したものか。大月健追悼特集を組む雑誌があれば、手書き時代の生原稿も写真版で載せてくれないかな。》

原稿ではないが、この書面の極度に形式化された筆蹟は、少しばかりスーフィー文字のようでもあり、やはり一度見たら忘れられないだろう。

大月さんは『唯一者』七号に「伊藤野枝を巡る人々」という原稿を寄せている。きっちりとまさに上の手紙のように書かれたものである。それはそれでいいのだが、いかにも大月さんらしいのは「編集後記」である。

《今回もやはり発行が遅れてしまいました。早くから原稿をいただいている筆者、雑誌を楽しみにしている方々には申し訳なく思っています。そのかわりといっては変ですが、内容的にはいいものが出来ました。》

《雑誌に詩を貰っている大石和雄さんが三月八日に脳梗塞で倒れた。十年先を歩く彼は私の指標であり、五年先が見えないのに十年先が分った感じで多少困惑しています。》

《三〇年ぶりにホタルの乱舞を見て感動した。田舎で見たのも農薬散布等を考えると、幼い頃だったのかも知れない。しかし、記憶は鮮明にある。ふわりふわりと優雅に飛ぶ姿は変らない。過去と現在が触れ合った時、一瞬自分がどちらに属しているのか分らなくなる。余り成長していない証左かも知れない。》

幽、明、どちらに属していてもそう違いはないわいと、裸足でニコニコしている大月さんの姿が浮かんでくる。

『唯一者』10号 石垣は残った





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by sumus2013 | 2014-08-10 20:51 | 古書日録 | Comments(4)
Commented by M at 2014-08-10 22:08 x
感銘いたしました。
Commented by sumus2013 at 2014-08-11 19:32
ユニークな忘れ難い方です。
Commented by 牛津 at 2016-03-23 06:36 x
このようなひと筋は真似ができませんね。頭が下がります。
Commented by sumus2013 at 2016-03-23 08:22
忘れ難い方です。
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