林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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花咲く乙女たちのかげに I

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サンシュルピスの青空古本市で求めた絵葉書。印刷というより写真に近い光沢がある。消印はおそらく04だから一九〇四年であろうか。明治三十七年。パリはシャンゼリゼ大通りの賑わいを写している。差出人が分らないが、宛名はパリ市内七区ラ・カーズ通りのテランド家。

小生にはこの写真がシャンゼリゼ大通りの何処から撮影されたものなのかは分らない。はっきりしないが、突き当たりは凱旋門かもしれない。ただ、今もこれと同じような街路樹が両側にそびえているのはメトロ駅シャンゼリゼ・クレマンソーの附近、マルセル・プルースト散歩道(Allée Marcel Proust)と呼ばれている辺りである。

というわけで、マルセル・プルースト失われた時を求めて3 第二篇「花咲く乙女たちのかげに I』(高遠弘美訳、光文社古典新訳文庫、二〇一三年)を読了した。読み始めたのが去年の三月だから、相当なスローペース。ざっと読み流すのは簡単ながら、空いた時間をみて少しずつ愉しみながら読んでいた。

語り手の「私」がスワンの娘で美少女のジルベルトへ恋心を募らせ、最後にはそれを思い切るところまで。綿々と続く緻密な事物や心理の描写、そこへ練りに練られた会話が織り交ぜられる。たいへんよくできた恋愛小説といった趣である。ギリギリの感じ。

散歩道にその名が冠せられているようにシャンゼリゼはこの作品の重要な舞台のひとつである。子供の頃から私とジルベルトはいつもシャンゼリゼで遊ぶ。青年になった私は別れようと思ったジルベルトと仲直りするために贈り物をしようと目論んだ。親から貰う小遣いでは足りない。私はレオニ叔母が遺してくれた昔の支那の大きな飾り壺(ポティッシュ)を売り払うことにする。

《私は壺を包ませた。今までちゃんと見たことがなかったので、こうして手放すことになったのは、少なくともその壺を知るきっかけにはなった。スワン家にゆくまえに私はそれを持ち出し、馭者にスワン家の住所を教えて、シャンゼリゼを通ってゆくように告げた。シャンゼリゼの角には父の知っている支那の骨董を扱う大きな店があったのである。私は仰天したのだが、骨董商は即座にその壺の代金として千フランではなくて、一万フランくれた。私は有頂天になってその札を受け取った。これなら一年中、毎日、ジルベルトに薔薇とリラの花をいやと言うほど贈ることができる。店を出て再び馬車に乗ると、馭者はいつもの道を通らずに、ごく自然にシャンゼリゼ大通りを下っていった。スワンたちはブーローニュの森の近くに住んでいたからである。ベリ街の角を過ぎた頃、スワン家のすぐ近くで、夕暮れの中を反対方向に向かって遠ざかってゆくジルベルトの姿を認めたような気がした。ジルベルトはゆっくりと、しかし迷いのない歩調で、若い男と並んで、話しながら歩いていた。男の顔がよくわからなかった私は馬車のなかで身を起こし、停めさせようとしてためらった。歩いている二人はすでに少し離れていたし、ゆっくりとした足取りは平行する優しい二本の線となって、楽園を思わせるシャンゼリゼの宵闇に溶けてゆく。》

ベリ街(Rue Berri)はシャンゼリゼ大通りから現在のメトロ駅ジョルジュ・サンクの手前で北へ延びている通り。シャンゼリゼのロータリー(ロン・ポワン)と凱旋門の中間辺り。「楽園を思わせる」はシャンゼリゼがギリシャ神話における楽園「エリュシオンの野」という意味をもつため。現在この辺りは観光客が闊歩する目抜き通りになっているが、上の写真のようだったとすればあながち言葉遊びだけではないという気もする。

《本当だったらたくさんの小さな贈り物でジルベルトを喜ばせることができたはずの、予想もしなかった一万フランという金を絶望的な思いで懐に入れて私は家に帰った。もうこれきりジルベルトには会わない。私はそう決意した。》

青年のある種の潔癖と身勝手な妄想がよく描かれている。その後、私はこの大金をどうしたのか?

《私は、毎日ジルベルトに花を贈るよりずっと短時間でその金を使ってしまった。夜になると我が身の不幸をつくづく感じて家にいられず、愛してもいない女たちのもとへ出かけてゆき、その腕に抱かれて涙を流したのである。》

……



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by sumus2013 | 2014-07-10 21:25 | 古書日録 | Comments(2)
Commented by 牛津 at 2014-07-11 08:44 x
これぞ、旅の醍醐味ですね。訪れた土地を往還する歓びは
つきません。羨ましいです。
Commented by sumus2013 at 2014-07-11 09:51
古い絵葉書はいいお土産です。絵柄もそうですが、できるだけ文字が書かれているのを選びました。牛津様にもイングランドの思い出がきっとたくさんおありでしょうね。
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