林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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アウラ

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カルロス・フエンテス『アウラ』(安藤哲行訳、エディシオン・アルシーヴ、一九八二年八月二〇日、装幀=羽良多平吉+WXY INC.)読了。ベアリュ『水蜘蛛』につづくソムニウム叢書2。

季刊ブックレヴュー』第二号の直前、ほぼ同時に発行されている。フエンテスの短編集。収録は「アウラ」および『仮面の日々』六篇、そのうち「トラクトカツィーネ、フランドルの庭から来た男」は『ソムニウム』第三号に発表されている。

ソムニウムの名に恥じない幻想作品ばかり。SF風あるいは怪奇小説風などと趣向はまちまちだが、始まりは日常の延長でありながら少し変なことが混線してくる、と思っているうちにどんどん崩壊してゆく、そのあげくが破滅にいたる、というのがどの作品にも通底するパターン。時間と空間を作者の勝手でつなげたりねじ曲げたりとやりたい放題だ。「アウラ」はメキシコ版雨月物語ですな。

古物数寄としては「チャック・モール」が印象的。

《キリスト教は生贄と礼拝という点で狂信的でもあり、血なまぐさくもあるんだ。だからインディオの宗教とごく自然に結びつくし、少し毛色のかわったものというわけだ。慈悲や愛、右の頬を打たれたら左の頬をということは拒絶されてしまう。メキシコでは万事がそんなふうなのさ。人間を殺さなくてはならんのだ、その人間を信じるためにはな。
「ぼくは若いころからメキシコのインディオの美術に関心を持っているが、ペペはそのことを知っていた。ぼくは小さな彫像とか偶像、陶器なんかを集めている。週末はきまってトラスカラテオティワカンで過ごす。たぶん、それを知っているものだから、ぼくを話に引き込もうとして、理屈をこねまわしてはそれをインディオに結びつけようとするのだ。確かにぼくはチャック・モール(マヤの雨の神)のてごろな複製を長いあいだ探していた。きょう、ペペはラグリーニャの市で石製の複製を、それも安く売っているという店を教えてくれた。日曜に出かけてみよう。》

《「日曜日のきょう、ラグリーニャに出かけてみた。ペペが教えてくれた露店にチャック・モールはあった。すばらしい出来で、実物大だった。店の親父は本物だと言い張るが、どうだか。石はありきたりのものだが、チャックの姿勢がもつ優雅さを損なっていないし、石塊じたいもどっしりとした感じがしている。

さて、このチャック・モールを買って帰り、地下室に設置してからが、物語本編の始まりだ。徐々に主人公(残された手記を読むという形式なので手記の筆者)は石像に蝕まれて行く……。


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「火薬を作った男」はP.K.ディックばりの破天荒な発想。あらゆる品物の耐用年数がどんどん短くなる。作るさきから崩れてしまい、作っても作っても間に合わなくなる。そして本も……

《だが、ある夜、書斎に入ったとき、はじめて背筋の凍る思いにさせられた。本という本の活字がインクの蛆のようになって床に散らばっていたのだ。あわてて本を何冊かひらいてみたが、どのページもまっ白だった。悲しげな音楽がゆっくりと、別れを告げるようにわたしを包んだ。文字の声を聞き分けようとしたが、その声はすぐにとだえ、灰になってしまった。このことがどんな新しい事態を告げるのかを知りたくて外に出た。空には蝙蝠たちが狂ったように飛びかっていた。そのなかを文字の雲が流れていた。ときどきぶつかりあっては火花を散らし、……《愛》《薔薇》《言葉》と文字は空で一瞬輝くと、涙となって消えた。》

なかなかに美しい情景ではないか。ある意味、紙の本の終焉を空を飛び交う言葉のスパークで表現しているとしたら、それはかなり正確な予言となっているのかもしれない。

《文字が印刷されたまま残っている本を地下室で見つけたときはひどく嬉しかった。それは『宝島(トレジャー・アイランド)』だった。この本のおかげで自分自身の思い出や多くの物のリズムを取りもどすことができた……。《八レアル銀貨だ! 八レアル銀貨だ!》というところまで読み終え、自分の周囲を見わたした。棄てられた物がどっしりとそびえ、ペストのベールがかかっている。恋人たち、子供たち、歌を歌うことのできた人たちはどこにいるのだろう?》

《スティーブンソンの本に野菜の種の袋がはさまっていた。わたしはその種を地面に埋めた、とても愛おしく!……》


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by sumus2013 | 2014-03-02 21:06 | 関西の出版社 | Comments(0)
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