林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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十七歳にもなれば

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『OEVRES DE ARTHUR RIMBAUD』(MERCURE DE FRANCE、1952)。ランボー詩集。ソチでの十代の若者たちの活躍を見ていて、ふとランボーの「ROMAN 小説」という詩を思い出した。


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 十七歳にもなれば、真面目なんかじゃいられない
 ーー美しい晩には、ビールの小ジョッキもレモネードも
 シャンデリア輝く騒々しいカフェも糞くらえ!
 ーー散歩道の緑の菩提樹の下を行くんだから。

 六月の素敵な晩には、菩提樹はいい匂いがするよ!
 時おり大気は甘く、瞼を閉じてしまうほど。
 ざわめきに満ちた風は、ーー街は遠くはないんだ、ーー
 葡萄の香りとビールの香りがする…

最初の二連のみ引用した、これは鈴木創士訳。他にもいろいろな訳があるが、例えば『ランボオ全集 I』(人文書院、一九五三年重版)の村上菊一郎訳。

 十七歳、堅気でばかりをられませぬ。
 ーー或る宵のこと、シャンデリヤまばゆく輝く
 騒々しいカフェの、ビールやレモナードなど可笑しくつて!
 ーー出かける先は遊歩道の菩提樹の青葉蔭。

 愉しい六月の宵々に菩提樹のよく匂ふこと!
 大気は時々甘いので瞼がとろりと合はさります。
 物の響を乗せた夜風は、ーー市街(まち)はここから程近い、ーー
 ちやんと葡萄の薫りやらビールの薫りを含んでゐます……

たしかに少々時代がかっておりまする。次は『ランボー詩集』(新潮文庫、一九八八年五八刷)の堀口大学訳。

 十七歳、まだ分別にやや欠ける。
 或る宵のこと、ーービールやサイダー、
 シャンデリヤまばゆいカフェの騒音を遠くのがれて!ーー
 遊歩道の緑なす菩提樹のかげへと出向く。

 菩提樹はよい香(か)を立てる、六月の、ああ、この良夜
 あまりにも大気の甘く、われ知らず瞼をとざす。
 さして遠くはないらしい街(まち)のもの音運びくる
 風に葡萄とビールの匂い。

例によってフライング気味の訳で(サイダー!)、原文と対照しながら読むと、拍子抜けしてしまうほどである。ただし、たしかに日本語としての調子は悪くないのも素直に認めよう。

鈴木訳はまさに現在語訳。他の二人と意味の上で大きく違うのが、まず第一連四行目の「菩提樹の下を行く」。斎藤、堀口ともに下へ行くの意味に取っている。下へ行くのか下を行くのか。On va sous les tilleuls。

もうひとつは斎藤、堀口が無視した小ジョッキ(bock)とビール(bière)を区別していること。これは当たり前でしょうね。なお最近は「アン・ボック」と言わず「アン・ドゥミ」と言うそうだ(「生中!」という感じです)。

個人的にひっかかったのはタイトルの「小説」(三者とも同じ)と二連目最後の行の「葡萄の薫り」。ロマンは長編小説を意味するので、日本語の「小説」から感じられる意味内容とは少し違っているようにも思う。ではどうするかと問われても分らないです。

もうひとつ、vigne は「葡萄」ではなく「葡萄畑」ではないかという疑問。六月の葡萄はまだ緑、果実が香るというわけではなかろう。そう言う意味では菩提樹の香りと対になっている。まあ、日本語では樹木と果実の区別が曖昧だから葡萄でもいいや、とも言える。

十七歳になるとと書いているにもかかわらず、じつはこの作品の自筆原稿には「23 septembre 70.」(一八七〇年九月二三日)という日付が入っている(Marcel Ruff の『Arthur RIMBAUD POÉSIES』A.-G.NIZET, 1978, の註釈による。リュフは文字がはっきり読み取れないとも記しており、鈴木訳では《[一八]七〇年九月二十日》としてあるので現在では二十日と読まれているのだろう

ランボーは一八五四年一〇月二〇日夕方五時に生まれた。ということは、この詩に日付を入れたときにはまだ十六歳にひと月足りなかった。むろん詩の内容からすれば六月頃に書かれたに違いない。リュフは、ランボーがバンヴィルに宛てた手紙にこのときすでに十七歳だと書いている例を指摘している。いつも背伸びしていたランボーが見えるようだ。




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by sumus2013 | 2014-02-15 21:54 | 古書日録 | Comments(0)
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