林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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戦争俳句と俳人たち

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樽見博『戦争俳句と俳人たち(トランスビュー、二〇一四年二月五日、装幀=間村俊一)。カバーの古本たちが如実に示すように『日本古書通信』の編集長である樽見さんならではの労作。目次などについては下記サイトをご覧頂きたい。

版元ドットコム 戦争俳句と俳人たち

詳しい内容を紹介するほどの近代俳句に対する知識も情熱も持ち合わさないのだが、俳句であろうと何であろうと、表現形式にかかわらず、戦時において表現者がいかなる態度を取るか(または取ったか)には興味を抱かざるを得ない。

まず戦争俳句とはどんなものか? 論より証拠、本書で引用されている多数の戦争俳句のなかからいくつか拾って並べてみる。


  悉く地べたに膝を抱けり捕虜    三鬼

  機関銃熱キ蛇腹ヲ震ハスル     三鬼

  霜解けず遺影軍帽の庇深く     草田男

  我を撃つ敵と劫暑を倶にせる  片山桃史

  やがてランプに戦場のふかい闇がくるぞ  赤黄男

  秋風のまんなかにある蒼い弾痕      赤黄男

  ふるさとの氷柱太しやまたいつ見む  安東次男

  靴に充つる冬の足指吾は兵たり    金子兜太

  霜柱この土をわが墳墓とす      楸邨

  ついに戦死一匹の蟻ゆけどゆけど   楸邨

  火の中に死なざりしかば野分満つ   楸邨

  母偲び戦ふ国の桃咲けり       金吾

  人を殺せし馬の顔しづかなり厩    一石路

  寒天に首打落すにぶき音     岩橋二合瓶


本書にはまだまだ多く(といっても全体数からすればほんの氷山の一角にも値しないであろうが)戦争俳句が引用されていて、その容態がどのようであったかおおよそ想像がつくようになっている。これが貴重である。実際に戦闘に参加した若者(桃史、次男、兜太ら)の作もあり、銃後の作もあり、空想で作ったものあり、実にさまざまだが、文字数が少ないだけに優劣がはっきり出てしまっているように思う。また反戦的なものは基本的には作れない(発表できない)ということもある。それらを考慮しても、正直、思ったより佳作が多いのは意外だった。

「あとがき」がいい。

《本書の執筆を始めて八年になる。いつの頃からか、表現に携わる人たちの戦中から終戦直後へかけての生き方に興味を持つようになった。以前から、新しい本よりも、時代や人の手を経てきた古本、マニアが収集の対象とするような稀少な本ではなくて、粗末だけれども著者の思いがこもったような文字通りの古本や古雑誌が好きで、目に付き次第さまざまな分野の古本を買い集めてきた。買い続けているうちに自然と、戦中から終戦後にかけての文献に集中するようになった。

 これは振り返って見ると、私の仕事である「日本古書通信」編集の中で知り合った近代文学研究の高橋新太郎さんや保昌正夫さんの影響が大きい。お二人ともすでに故人となられて久しいが、共に研究の核に、敗戦後、文学者や研究者が、戦争期の言動をどのように反省し、再出発をとけたかという視点をお持ちだった。しかも、その検証の重点を資料の収集におかれていた。》

なるほど、そういうことならこの書物の動機も公平を期そうとする視点もうなずける。

《本書のテーマである戦中、終戦直後の俳句関係資料は、注意していれば多くを集めることができる。人の記憶や回想には何がしかの編集が加味されるが、資料は誤りはあるが、嘘をつかない。本書はその収集資料の記録のようなものだ。》

「資料は嘘をつかない」……敏腕弁護士が吐きそうな名セリフではないか。

個人的に収穫と思ったページはこちら。荻原井泉水『俳句する心』(子文書房、一九四一年)の引用部分。コンクリート・ハイク。

《大正末から昭和初期のアヴァンギャルド芸術であった「マヴォ」の影響であろうか。俳句の未来派的な「試み」が示されている。「活字は必ずしも縦にのみ用ふべしといふ規則もないのだから、どういふ風に用ひても最も有効に用ひた方がよろしい」と書くなど、井泉水の柔軟な考え方がわかる。その文中にある、「層雲」掲載の作品を、井泉水が未来派風に書き換えた例を次頁に示してみよう。

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他に高柳重信が戦後発表した奇抜に文字を配列した俳句も紹介されている。重信の師匠は富澤赤黄男で、赤黄男には吉岡実も多大な影響を受けた。


  一木の絶望の木に月のあがるや      赤黄男


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by sumus2013 | 2014-02-05 20:42 | おすすめ本棚 | Comments(2)
Commented by 中嶋廣 at 2014-02-07 12:59 x
トランスビューの中嶋と申します。『戦争俳句と俳人たち』の編集を担当
したものです。詳細にご批評くださり、誠に有り難うございます。引用さ
れた句は、本書の中でも優れたものだと勝手に思っておりましたので、
大変嬉しいです。
こんなふうに読んでくださり、ご紹介していただけると、出版した甲斐が
あります。心よりお礼申し上げます。

Commented by sumus2013 at 2014-02-07 14:58
本当に樽見さんでなければできない仕事だと感服しております。よくぞ出版してくださいました。
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