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林哲夫の文画な日々2
by sumus2013


大隈伯肖像および印刷機あれこれ

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最近入手した石版の肖像画「立憲改進党代議会長/大隈伯肖像」(静岡民友新聞第六百八号付録 発行静岡民友新聞社 明治二十六年十一月一日 発行印刷人多々良藤右衛門 編輯人横山是 東京京橋区元数寄屋町泰錦堂印刷)。静岡民友新聞は昭和十六年に静岡新報と企業統合され現在の静岡新聞となる。サイズが大きすぎて全紙面をスキャンできなかったが、この画像がA4大で周囲にかなりの余白を残す。

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絵の作者だが、右下隅に「繁」のサインがある。誰なのか専門外にて見当もつかないけれど、便利な時代、いろいろ条件を変えて検索してみると、おそらく「波々伯部繁」ではないかと推定できた。「芸妓競」(改進新聞、明治二十六年、郡山市立美術館)あるいは「衆議院議員肖像」(改進新聞、明治二十三年、東京大学・近代日本法政史料センター)などの作品が残っているようだ。

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印刷機についてのコメントをいただいたので『写真技術講座6 写真製版術』(共立出版、一九五六年一月三〇日)からいくつか図版を引用しておく。まずは手引石版印刷機。こういうものはそう進歩はないように思うので明治時代もおそらく上のような機械を使ったのではないだろうか(?)。

以下、手製コロタイプ印刷機、四六全判金属平版枚葉印刷機、そしてオプセット(誤植? すべてオプセットになっている)の校正機(中西鉄工所製)、輪転オフセット機、四六全判2色オフセット輪転機(日本タイプライター製)の図版。他にいろいろあるも省略。


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コメントいただいた二条通の印刷所は「十分屋」であろう。

ハイデルベルグ プラテンT型 1960年製(二条通寺町東入・十分屋)
http://juppunya.com/kappaninsatsu.htm

プラテン機の稼働状態のヴィデオがこちらで見られる。

ドイツ ハイデルベルグ社製 T型プラテン印刷機(和歌山・藤井印刷)

小気味好い機械音である。仕事してるなあ〜という感じがする。ただ思うのは、活版印刷が廃れて、編集や印刷工程などがコンピュータに頼り切っている今日では、いわゆる職人技が廃れてしまったたかのような錯覚があるかもしれない。しかし実際、仕事をしてみると、オペレータの技術によってかなりなクオリティの差が出て来るのも事実だ。例えば色合いの微妙なテイストが機械任せにはできないように。まだまだ当分の間は機械を使うのは人間だと思っていいようである。


by sumus2013 | 2014-02-02 21:42 | 古書日録 | Comments(4)
Commented by yf at 2014-02-03 08:23 x
最初の石版印刷機、取り上げ下さりありがとうございます。小生の処では一色刷りのハイダルベルク社オフセットの版下に使うため使用していました。今日、ご紹介の名刺印刷では湯川書房・湯川さんでは不合格だと思います。プレス仕過ぎ、裏も印刷する場合があります。先の『湯川書房』展で京都の方が「活字印刷は楽、押せばいいのだから」と話されていた方があり小生は「あまいなぁ」と、この動画のプラテン機は戦前のものを使っていましたが、輸入再開で一番機が入っています。職人さんのお話ではプレスの胴圧が細くなっているとの事です。不要機、輸入会社に展示持ちかけましたが「NO」で後になって、この不要機を欲しい、ショールームに最新機と並べると。「スクラップ」になってしまった後でした。
 今はどこかから手に入れ、並べているはずです。
Commented by sumus2013 at 2014-02-03 14:03
和紙を使うとどうしてああなるのだと思います。べつに擁護する義理はありませんが。
Commented by yf at 2014-02-03 18:42 x
付け加えようとして先にお返事頂きました。このお店の技術力ですと、おそらく裏刷りをする場合微妙に圧力変えていたと思います。先の『湯川書房』展でのお話は、退職後初めた「名刺印刷屋」と仰っていましたから「素人にしては大胆な」と思っていました。あのプランテン機の製造元が4色版原色印刷機を発売し、そのショーを実施実演した処が湯川さんを限定本を、そそのかせてこの道に進ました、鈴木印刷でした。鈴木さんは「10周年」でしたかの記念の催しに「自分もこれに進めさせた責任の一端がある」とおっしゃっていました。
Commented by sumus2013 at 2014-02-03 20:09
そういう魅力が活版印刷にはあるようです。
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