林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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歌の塔

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ジャック・プレヴェール『歌の塔』(柏倉康夫訳、未知谷、二〇一三年一二月一〇日)が届いた。プレヴェールの一筋縄ではいかない、しかしはっきりと一本筋の通った世界をじっくり味わう幸せを感じる。

『歌の塔』は、スイスのローザンヌ書籍組合から1953年4月30日に出版された。プレヴェールの各詩篇に次いで、ヴェルジェ作曲の手書きの楽譜が印刷された豪華本である。プレヴェールがクリスチアーヌ・ヴェルジェに最初に作曲の話をもちかけたのは1928年2月のことであった。

 本が出版されて間もなく、このうちの何曲かをジェルメーヌ・モンテロとファビアン・ロリスが歌い、プレヴェール自身の語りを入れたレコードがデッカ社から発売された。

 豪華本の原題は、JACQUES PREVERT: TOUR DE CHANT Musique de Christiane Verger Dessins de Loris, La Guilde du Livre Lausanne. 1953。所持しているのは限定5300部のうちのNo. 1909である。

 日本で最初にこの本に注目したのは小笠原豊樹で、15篇すべてを翻訳した『プレヴェール 唄のくさぐさ』を1958年に昭森社から出版した。原詩の意味をくんだ見事な訳だが、新たな翻訳をこころみ、ロリスのデッサンとヴェルジェの楽譜もいくつか採録してみたい。》(『歌の塔』ムッシュKの日々の便り

小笠原豊樹訳『唄のくさぐさ』(昭森社、一九五八年)については daily-sumus でも紹介したことがある。今、本書と比較してみると、ほとんど別の本だ、とまでは言えないかもしれないが、かなり大きく違った言葉遣いが随所にうかがえてたいへん興味深い。

まず書名がそれを如実に表しているだろう。『歌の塔』は文字通りの訳で『唄のくさぐさ』は意訳と言っていい(いろいろな唄を集めたものの意)。全体的に『歌』の方がよりドライで歌詞の意味はストレートに伝わってくる。『唄』は、昨日取り上げた鈴木訳『ドン・ジュアン』がそうであったように、日本語の詩としてのリズムや体裁を重んじる風があるようだ。それがときとして過剰になる。おそらく当時でもやや時代がかっていたのではないかと思える長閑な言葉が並んでいる。もちろん、それはそれで捨て難いものがあるのも事実だが。内容を正しく把握しフレッシュな日本語に移しているということでは『歌』の方がはるかに優れているように思う。

例えば詩篇のタイトル。『唄』が「探検」としているのを『歌』では「配達」としている。原題は「L'expédision」。この詩はいちばん最後に置かれている作品で、ある男がルーヴル美術館に缶を持ち込んで置いてくるというモチーフなのだが、ナンセンスで、ある意味、プレヴェールのコラージュ作品に通じるシュールな奇抜さがあって、小生はかなり気に入っている。歌詞は引用しないけれども「探検」としたのはさすがに的外れだろう。「配達」がぴったりはまっている。梶井基次郎が丸善にレモン爆弾を仕掛けるようなものである。

もうひとつ『唄』が「自由な町筋」としている詩、これを『歌』は「外出許可」とした。これはまたひどくかけ離れた訳語である。原題は「Quartier libre」でこの場合は『唄』の方が直訳になっている。しかし、詩を読むと、軍人(あるいは警官)が被るケピ帽を鳥かごに入れ、帽子のかわりに鳥を頭にのせて外出する男、彼は町で司令官に出会っても敬礼をしない、という内容である。モチーフとしてはそんなに奇抜ではないけれども、歌詞としてなかなかこういうふうに表現することは誰にでもできるものではないなあ、とプレヴェールの才能に感服するのだが、また同時に「外出許可」とした柏倉訳にも深く頷かされる。

  Quelqu'un(これは『歌』も『唄』も同じ「ある男」です

Un homme sort de chez lui
C’est très tôt le matin
C’est un homme qui est triste
Cela se voit sur sa figure
Soudain dans une boîte à ordure
Il voit un vieux Bottin Mondain
Quand on est triste on passe le temps
Et l’homme prend le Bottin
Le secoue un peu et le feuillette machinalement
Les choses sont comme elles sont
Cet homme si triste est triste parce qu’il s’appelle Ducon
Et il feuillette
Et continue à feuilleter
Et il s’arrête
A la page D
Et il regarde la page des D-U Du ..
Et son regard d’homme triste devient plus gai et plus clair
Personne
Vraiment personne ne porte le même nom
Je suis le seul Ducon
Dit-il entre ses dents
Et il jette le livre s’ époussette les mains
Et poursuit fièrement son petit bonhomme de chemin.

今日出海(こん・ひでみ)がフランスへ行ったときにその名前で困ったという「con」がテーマの作品。プレヴェールはこの手のダジャレのような言葉遊びをリアルな平面に取り込んで歌うのが巧みである。この詩の柏倉訳はこちらで読んでいただけます。

ジャック・プレヴェール「歌の塔」Ⅶ

ついでにイヴ・モンタンが歌う「ある男」も

YVES MONTAND Quelqu'un - avec paroles


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by sumus2013 | 2014-01-13 21:29 | おすすめ本棚 | Comments(2)
Commented by ムッシュK at 2014-01-14 16:23 x
「歌の塔」をご紹介くださり、感謝いたします。訳書にはクリスティアーヌ・ヴェルジェの楽譜の複製も再録しましたが、お教えいただいたURLでイヴ・モンタンの歌声を聴くことができました。Quelqu'unの詩をの内容を実にうまく歌で表現していると感心しました。オランピア劇場でのリサイタルを思い出して、懐かしいかぎりです。Merci infiniment.
Commented by sumus2013 at 2014-01-14 19:23
このイヴ・モンタン、しびれます!
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