林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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勇敢なる兵卒シュベイクの冒険

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『勇敢なる兵卒シュベイクの冒険』上巻(衆人社、一九三〇年)。函付きで1050円だった。安い。しかしながら、安いのには理由があった。奥付が切り取られていたのだ。よって発行日は今直ぐには分らない。この上巻に第一部から第三部まで収められているが、下巻は出なかった。


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作者のヤロスラス・ハシェク(1883-1923)はプラハ生まれ。新聞記者や編集者をやっていた。『ハシェクの生涯』(ヤノーホ、土肥美夫訳、みすず書房、一九七〇年)によれば、ハプスブルグ帝国三百年の支配から脱却するためにロシア帝国の援助を求めようというのがハシェクの立場だったようだ。ところが、第一次大戦が起こり、ロシア革命が起こり、チェコ軍は反革命軍としてロシアへ侵攻する。このときハシェクも従軍し、ロシアで捕虜になった。そこで一転、赤軍に賛同して一九一八年にはロシア共産党に入党した。一九二〇年末、プラハに戻ってシュベイクの執筆を始める。自分自身の戦争体験が色濃く反映していることは間違いないようだ。

《ハシェクの創作人物シュベイクは、世界文学のなかでユニークなイエス・マンである。彼は、自分の個人的な小世界を諸官庁の強力な大世界に従属させないで、大げさなきまり文句で装備された大きな社会機構及び生存機構を零落した犬商人の狭い生活像のなかに組み入れ、上部を下部へ転じ、そのようにして権力の無常と内的空虚さをあらわにする。》(『ハシェクの生涯』)

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シュベイクは犬商人。退役兵なのだが、召集がかかる。進んで従軍しようとするのだがリュウマチなのだ。しかし簡単には許してくれず、絶食や浣腸などの拷問を受ける。そして最終判断のときが来て軍医たちの前で面接を受ける。詐病兵などはどんどん前線へ送られるならわしだった。

《シユベイクは、無邪気な子供だけにしかない神様のやうな静けさを以て、委員連の顔をじつと眺めてゐた。
「やい畜生、貴様は一体何を考へてゐるんだ?」と、委員長が近づいて言つた。
「申し上げます、私は何も考へてゐないのであります」
「こん畜生!」と、委員の一人がサーベルをかちやつかせながら叫んだ「何も考へてゐないだと? やい、シヤムの象、何故貴様は何も考へないんだ?」
「申し上げます、軍隊では兵卒に禁じてゐるから、考へないのであります。私が九十一聯隊に居た頃大尉殿がいつも仰言つたでありますーー『兵卒は自分で考へるもんぢやない。上官の方で考へてやる。自分で考へると禄な……」
「黙れ!」と、委員長が怒つて吐鳴りつけた「貴様は本当の白痴(イヂオート)だと人が信じてくれるものと思つてるんだらう。だが貴様は白痴ぢやないぞ、シユベイク、貴様は何でも心得てゐる抜け目のない奴だ、禄でなしだぞ、道化者だ、破落戸(ごろつき)だ、解つたかーー」
「申し上げます、解つたであります」
「黙れと言つたぢやないか、聞こえなかつたのか?」
申し上げます、黙れと仰言つたのは、聞こえたであります」
「ちえツ、聞えたら黙つとるもんぢや。黙れと命じたら、静にしとるもんだといふ事はよく解つとるぢやらう」
「申し上げます、静にしとるもんだといふ事は解つとるであります」
 軍医連は黙つて互に顔を見合せた、そして特務曹長を呼びつけたーー
「そこに居る奴を」と、委員長はシユベイクを指しながら言つた「事務所へ連れて行つて待たせて置け。こいつは魚のやうにぴんぴんしてゐやがる。何処一つ悪い所もないのに、仮病を遣つて、その上勝手な熱を吹いとる。こら、シユベイク、貴様、衛戍監獄へぶちこんで、戦争といふものは冗談事ぢやないつてことを見せてやるから、さう思へ」》

というふうなトンチンカンな、しかし妙に筋の通ったドタバタが続くのである。シュベイクの思考方法(というかハシェクのギャグ作法)がなじんでくれば、それはそれでなかなか辛辣に苦笑いできる作品である。

挿絵のヨセフ・ラーダについてはこちら。

http://hrusice.pragmatic.cz/pamatnik.html

http://www.lcv.ne.jp/~morinoie/joseflada.html




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by sumus2013 | 2014-01-05 22:01 | 古書日録 | Comments(0)
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