林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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書斎の宇宙

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高橋輝次編『書斎の宇宙 文学者の愛した机と文具たち』(ちくま文庫、二〇一三年一二月一〇日、装幀=間村俊一、装画=林哲夫)読了した。さすがに楽しい読物だった。このところアンソロジーを頂戴する機会が多く、アンソロジーの安易さについて少々不満をもらしていたが、その気持ちは変らないにしても、やはりアンソロジーでしか出会えないだろう作品がこの世界にはゴロゴロ転がっていることを改めて思い知らされた。

書斎というテーマは小生もずっと興味を抱いてきた。書斎をテーマにした書物を求めたり、書斎特集の雑誌が目につけば買っておいたり、あるいは切り抜きをしたり、抜き書きをしたり……。洋の東西を問わず、多くの人々が書斎について語り、写真を撮っている。だからこのテーマなら切り口次第で何冊でも本が作れるような気もするのだ。

そこは高橋さんである。近代から現代の文学者、漫画家などに執筆者を絞り、さらに「机」および机の周辺に置かれた文具にスポットライトを当てたため、一冊を通してひとつの世界を描き出すことに成功しているように思う。

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上は石川近代文学館の葉書より。《唐金の手焙り、朱更紗の座布團、原稿用紙、ペン皿、こより。在りし日を語る机辺。ーー犀星》と説明がある。本書の巻頭に置かれているのがその室生犀星のエッセイ「机」。そこにはこの机とおぼしき描写も出ている。

《僕は女机の朱塗りのした抽出のついたのと、古手習机のつやの持ったのと、その外に一脚の支那の小机、少し大振りの紫檀の彫付きの机を持っているが、時々、それらの机を取りかえて物を書きたい気になる。飽性であるよりもそれらの机で嘗てどういう作品を書いたかという、妙に精神的な思い出が深々とこもっていて、そういう作品の回顧というものが非常に懐かしまれて来るのである。》

少し大振りの紫檀の彫付きの机」が上の写真の机に該当するのだと思う。このように作品を生み出してきた机に愛着をもつ作家は多いようだ。多くの人がその机を買ったときの値段を書き留めている。戦前のことで二円から四円くらいもしたらしい。あるいはただでもらったり、あつらえてもらったりした人もいるが、とにかくどうやって机を手に入れたかということに誰もが第一のこだわりをもっているのも面白いと思った。

原稿用紙に対するこだわりもかなり強いものがある。銘柄が同じでないと書けないという作家が少なくない。既製品が気に入らないから、特注を作らせる作家がいるかと思えば、特注を作らせるなどイヤミだと感じてあえて市販品を使う作家もいたりする。井伏鱒二は市販派である。

《今、これを書いている原稿用紙は荻窪の文房具屋で買った市販のものである。三十年来、その文房具屋のものを使っている。このごろのものは、灰色の罫で欄外にABC10×20のしるしがついている。》(「机上風景」)

安岡章太郎はこう書いている。

《まだ駆け出しの作家にもなっていなかった頃、先輩に注意されたことがある。
「きみ、あんまりこった原稿用紙を使っていると、その紙が品切れになったとき、原稿が書けなくて、こまることがあるよ。だから、ぼくなんか、そのへんの小学生相手の文房具屋で売っている紙を買ってるんだ」
 いま考えてみれば、これははなはだ有り難い忠告であった。》(「先輩の忠告」)

先の文章を読んでいるのでこの先輩は井伏なんじゃないかとピンとくる。こういうところがアンソロジーの醍醐味だ。原稿用紙の話で泣かせるのは小檜山博の「追っかけ」と「原稿用紙、その後」である。ずっと同じ店の同じ原稿用紙を使い続ける話だが、そこにドラマが生まれる。詳しくは本書にて。

もうひとつ興味深いのはワープロへの過渡期、ワープロを使うことについての逡巡や試行錯誤が多くの作家のなかで化学変化のように生じていたことであろう。今はPCも含めてワープロを使わない物書きのほうが圧倒的に少数派なので、読んでいると、明治時代に初めて汽車に乗った人たちの感想のように少々滑稽でもある。そんなに遠い昔ではないのだけれど。しかも編者の高橋さん自身が今もってPCを使わない手書き、ファックス派なので、その意味でもこの辺り作家の内心の機微に触れるコレクションができたのかな、などと思ったりする。





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by sumus2013 | 2013-12-15 21:10 | 画家=林哲夫 | Comments(0)
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