林哲夫の文画な日々2
by sumus2013
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夜がらすの記

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川崎彰彦『夜がらすの記』(編集工房ノア、一九八四年六月二五日二刷、装幀=粟津謙太郎)。先日、街の草で求め、帰路読み始めて面白く、あっという間に読み終わった。二〇一〇年二月四日に亡くなられた川崎さんを偲んで「夜がらす忌」が催されているのは知っていたが、この作品集のタイトルだったのだ。川崎作品は『ぼくの早稲田時代』(右文書院、二〇〇六年)以外はほとんど読んでいなかったので新鮮だった。奈良で『ぼくの早稲田時代』の出版記念会がもたれ、小生も装幀を担当したので参加した。ブログになる前の「daily-sumus」にその日の様子を書き留めている。

《◆午後から奈良へ出かける。川崎彰彦『ぼくの早稲田時代』の出版記念会が宇多滋樹さんの古書喫茶「ちちろ」(ならまち文庫の北店、奈良市南半田西町18-2)へ。近鉄奈良駅から北へ五六分、NHK奈良放送局の北側。宇多さんの自宅でもある町屋。途中、古い商家などあり、写真を撮りながら行ったので午後四時スタートのジャストに到着。川崎さんを中心とした同人誌『黄色い潜水艦』の方たちなど四十人ほどがすでに着席していた。顔を赤くした久保田一さん(『虚無思想研究』発行人)が「乾杯の練習と、練習の練習をやったんだよ、がはは」と。

 『ぼくの早稲田時代』の他に三輪正道氏、林田佐久良氏の著書も併せた合同出版記念会とのこと。車椅子の川崎さんもお元気のようすで何より。青柳さんが右文書院の社長・三武氏を案内して来場、ようやく正式の乾杯となる。南陀楼綾繁氏は京都、奈良での古書収穫を膝元にどっさりと。中尾務さん、年末に怪我をされたとのことだが、相変わらず。『ぼくの早稲田時代』の出版について三武氏、南陀楼氏、青柳氏らがマイクでひとくさり。右文書院としては初の小説出版だそうだ。堀切直人氏の著書とともに、au の携帯サイト「声の図書館」に登録されているとのこと。音声で朗読を聞くことができるらしい(携帯をもってないので詳しくは分からないけど)。

 編集工房ノアの涸沢さんも東京で出版されたことに意義があるとあいさつ。ノアさん、お酒が入ると大胆になるタイプのようだ。ノアの装幀をよくしておられる粟津謙太郎さんも見えていた。うらたじゅんさんも準備から当日の世話までたいへんな奮闘ぶり。とにかく川崎さんが多くの人たちに慕われる存在だということを強く感じさせられた。川崎夫人と久保田夫人がまたすばらしいキャラクターだった。青柳さん、久保田夫人に可愛がられて(?)いた。川崎さんが「今日は成人の日ですが、わたしはまだ未成年ですから、これからもがんばります」と挨拶したのが印象に残る。》(2006年1月9日)

なんとも楽しげな記念会だったなあ…。七年前のことなのに、何か一時代が過ぎたほどにも遠くに思われる。

本書には短篇、中篇が七作収められているが、連作なので、ひとつのまとまった作品としても読める。作者もそのように意図していたようだ。なかで注目したのは「「芙蓉荘」の自宅校正者」に登場する画家の虫塚君。

《富貴ビルという名前負けもいいところのひょろ高い雑居ビルにデザイン・写植工房を構えている画家の虫塚鋭太郎のところを覗いてみることにした。
 長髪のよく似合う虫塚君は机に向かって色見本のカード繰っていたが、敬助が顔を出すと、すぐ仕事をやめて、ウイスキーを持ち出してきた。
「仕事はいいの?」
 と敬助がたずねると、
「ええ、きょうはもうええんです」
 といった。午後二時ごろ行っても、必ずそういって酒を持ち出してくるのだ。
 写植機に向かっていた女詩人の木沼さんが、部屋の片隅のカーテンの向こう側へ行って、何かごとごとやっていると思ったら、サラミソーセージやチーズや、鶴橋の朝鮮市場で買うのだという青唐の赤唐辛子味噌漬けを皿に盛ってきた。このおそろしく辛いやつが、詩人の金時鐘仕込みで、木沼さんは好きらしく、いつ行っても常備してあった。》

《壁には、どこか南方の民俗楽器らしい古ぼけた二弦の木製弦楽器と虫塚君の腐蝕画[エツチング]、それと虫塚君がネパールで採集してきた鮮麗な蝶類の標本が掛けてある。
 きょねんの夏、敬助が虫塚君らと鹿児島県の串木野から船で渡る甑[こしき]島へ行ったとき、虫塚君は柄のない捕虫網を携行していて、たくみな網さばきで蝶をからめ捕り、けっして狙いを誤つことがなかった。その道の大ベテランなのだった。そして軽く蝶の胸部をつまんで昇天させ、セロファンに包むと、使い古してでこぼこのついた三角のブリキ缶におさめた。その手つきも慣れたものだった。》

虫塚鋭太郎は本書の装幀もしている粟津謙太郎氏であろう。このくだりを読んで氏のエッチングに虫のモチーフが多いのが頷けた。本書の表紙に描かれている鳥、これが「夜がらす」(ゴイサギ)。うまく特徴を捉えている。

初版は同じ年の五月二十日。ほぼひと月で増刷とは。しかし、それが納得できる名作である。
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by sumus2013 | 2013-12-12 20:41 | 古書日録 | Comments(0)
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